空が開く時、死を覚悟せよ。

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気が付くと、暗闇の中に居た。 全く音が聞こえない。 五感が働いていないのか? 形容し難い気持ち悪さが、自分の中に一気に広がる。 何も見えない、何も聞こえない。 恐怖を押し殺すものの、長くは正常でいられそうにない。 生きるためのそれらが、同時に2つも機能しなくなっている異常さは、心身に連鎖する。 しかし、機能しているものもある。 床が存在している事を、触覚で把握できた。 それを頼りに、この空間がどうなっているのか、認識しなければ...。 平らな床面は少なく、すぐ近くに凹凸があるのがわかった。 その凹凸に入念に触れると、自分とほぼ同じ形をしているのではないかと思われた。 死体か!? 逆方向にも、同じような物があった。 その隣にも、その隣にも。 そしてそれらを乗り越えた、その先にも。 しかし、死体にしては、臭いを感じない。 嗅覚も終わっているのだろうか。 ならば、と、そいつを舐めてみた。 自分の皮膚を舐めるのに近い味がした。 やはりこれは、死体ではなかろうか。 床に敷き詰められた死体は、どこまで続くのだろう? それらを踏みしめ、闇の中を進む。 と、突然、壁にぶつかった。 空間を隔てる壁面が有るらしい。 壁面に触りながら、移動する。 すると、壁面が緩やかにカーブしている事に気が付いた。 それは、内側に曲がっており、円を描いて元居た場所に戻るようになっていた。 出られない! 脱出口のようなものがあるのだろうか? 壁面や床面に仕掛けが? いや、シンプルに、上からなら脱出できるかもしれない。 上空はどうなっているのだろうか? 天井がある、閉鎖空間かもしれないが、それならそれでどこかを破壊できないものだろうか? どうやったら上方向に行けるのか思案していたら、上空の闇が、「シュワーーーーッ!!」という轟音と共に端からめくれるように晴れ、光が射し込んだ。 明るくはなったが、あまりの眩しさに、目はしばらくその機能を果たさなかった。 その間、鼻に凄まじい臭いが襲い掛かって来た。 何かの生き物の、屍臭と思われるものがすぐ近くから放たれていた。 目が機能を取り戻して周囲を確認すると、さっき調べた形の空間の中に、自分と同類の死体がぎゅうぎゅうに敷き詰められていた。 最悪だ...。 地獄でしかない。 自分が今、こうして生きて動けているのは、奇跡の中の奇跡なのだろう。 どうやったら生きてここから出られるのか? 死体を階段状に積み上げて、そそり立つ壁の向こうを目指すか? かなりキツいだろうけれど、やってみる価値はある。 それを思い付いた、その時だった。 自分の身体以上に大きな物が2つ、空から現れ、自分とその周囲の死体を挟み込んで上空に連れ去った。 そして、洞窟のような空間に放り込まれた。 その洞窟は、床面がうねり、動き、自由に動かせてもらえない。 入り口は、開いたり閉じたりしている。 運良く、入り口の方に押し出された自分は、ここから飛び降りれば助かるかもしれない、と思えた。 外の世界が見える。 よし!今だ! そう思った瞬間、ダイヤモンドのように硬い天井と床が、一瞬にして身体を挟み込み、砕き、私を永遠の闇へ送り込んだ。
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