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交渉
「確かに、貰い受けた」
珍しいものが好きだと言う家元は、柄を握り、刀身を眺め、満足そうに笑う。
「家元、少しお時間をいただけませんか?」
「なんだ」
「単刀直入に申します。由紀乃さんを譲っていただけないでしょうか?」
家元は眉をピクリと動かし、座る私を見下ろした。
「ほう……そんなにあれが気に入ったのか?しかし、あれをそばに置くのを、お前の父親は許さないのではないか?あれは子を孕めないからな。跡取りができない」
「跡取りのことはまた考えます。方法はいくつかありますので……」
家元は片膝をついて私に詰め寄った。
「……それで?」
「私は、由紀乃さんを番にと望んでいます。昨夜、あの首輪が邪魔で仕方がなかった。あれを外していただきたいのです」
「随分と勝手なことを言う……」
「家元は、由紀乃さんを身請けしたと言われていました。もちろん、家元が身請けされた額のそれ以上でも構いません。由紀乃さんを譲っていただきたい」
家元は私の顎に鞘を置き顔を上向かせた。
「……面白くないな。金の問題ではないんだよ。由紀乃は私の楽しみなんだ。老い先短い年寄りの道楽を取らないでくれないか?」
道楽……そんな理由で由紀乃を手放したくないというのか。
「……私に出来ることはありませんか?」
「お前も粘るな。これでは首輪に銀の装飾をした意味がない」
「装飾の意味?」
「銀で項を守っていれば、由紀乃を番にと望むアルファは現れないと思っていた。実際、今まで一人もいなかった。銀は邪悪なものを近づけないらしいじゃないか」
「邪悪、ですか……」
「私にとっては邪悪でしかないだろう?こうして由紀乃を手放す危機が訪れている」
「随分と変わった解釈をされるのですね……」
「面白いだろう?楽しむならとことんやらなければ意味がない」
ニヤリと笑う家元を、理解することは出来そうにない。
「しかし、こうしてずっと粘られるのも面倒だな……」
家元は私の手に刀を握らせた。
「家元?」
「欲しければ、自力で奪え」
「どういう……」
呆気にとられる私を見て家元は高笑う。
「お前のそんな顔が見られるとは!その刀で、お前が首輪を切ってやればいい」
「切る……」
「言っておくが、一刀両断でなければ切れないぞ」
由紀乃の首につけられたままの、あの首輪を切れと言うのか。
「無理を言っているつもりはない。私は由紀乃を傷つけたくはないし血を見たいわけでもない。お前が道場での鍛練する姿も見た上で提案しているに過ぎない。やる、やらないはお前次第だ」
「私次第……」
「ここへの滞在を一日伸ばしてやる。七時に道場で待っている。猶予はそこまでだ。成功すれば刀も返してやる。悪い話ではないだろう?ついでに教えてやるが、首輪の鍵の複製は作れない。そんな単純なものでは首輪を頑丈にしている意味がないからな」
「…………」
「お前がどうするのか、楽しみだ」
家元はそう言い残し、その場を去った。
一瞬でも由紀乃に刀を向ける、そんなことが私にできるのか。
ドクリ
突然、鼓動が激しくなり体が熱くなる。体がオメガのヒートに反応し始めた。一旦、自室に戻り刀を所定の場所に収め、由紀乃の部屋へと急ぐ。感じるフェロモンは数時間前の時より強い。由紀乃に触れた瞬間に暴走してしまいそうな予感がする。
扉をノックするが反応がない。
「由紀乃、入りますよ」
預かった鍵を使い扉を開けると、部屋に充満していたフェロモンに包まれクラクラする。
「由紀乃!」
「椿、くん……あっ、はやく、きてっ」
部屋を仕切るカーテンの向こうに人影が透けて見えた。
扉を閉めて鍵をかけ、帯を解きながらカーテンの向こうへと急ぐ。
「ンっ……はっ……あっ」
そこでは、寝間着を床に落とし、上半身をベッドに横たえた由紀乃が膝をラグにつき、自らの手で体をまさぐっていた。秘部に指を入れてグチグチと音を立て、胸の尖りを爪先でカリカリと弄びながら小ぶりなものをベッドから垂れ下がったシーツに擦り付ける。
ブチリと、理性が切れた。
「ごめ……なさ……」
「何も悪くはありませんよ」
着物を脱ぎ落とし、由紀乃の背中から肌を合わせる。
「椿っ椿……お願い、はやく、ちょうだい……」
由紀乃をベッドへ上げ、腰を高く上げて双丘を両手で割り開らく。
「ぃやぁ、見ないで!」
「どうして?私を欲しがっているここは可愛いですよ」
ヒクつくそこに、ぐりゅりと舌を差し入れた。
「舐めちゃ、ダメぇ……」
「でも、どんどん溢れてきますよ……甘い蜜が」
「甘いなんて……うそ……」
もう一度舌を差し入れ、舌先を固くして角度を変えながら壁をなぞる。流石にシコリまでは届かないが、由紀乃はガクガクと膝を震わせ肌を桜色に染めていく。
「だめ……だめ……そんなの、しらない……」
舌がギュッと締めつけられる。
「中で達したのかな」
「いじわる……」
「堪らないな……もっと私で善くなってください……」
秘部から滴る愛液を血管の張り出したものに塗り広げ、一気に貫いた。
「あん!まだ、イッてるのにぃぃ」
由紀乃は小ぶりなものから精液を飛ばした。締めつけが終わらない中を容赦なく攻めていくと、先端が子宮の壁に当たる。
「奥、当たってる!あっあっ」
うつ伏せの体を抱き起こし、反らせた胸の飾りを両手で弄りながら、膝立ちにさせたところをさらにガツガツと攻め立てる。由紀乃は、ずっと快楽の頂点を味わっているようで、虚ろな目に涙を浮かべ、閉じきれない唇から銀の糸が垂らしていた。
「あ……あ……いい、よぉ……おしり、きもちいぃよぉ……」
「出しますよ……ぐっ……はっ」
由紀乃を振り向かせ、口内を舐め味わいながら由紀乃の中に精液を流し込む。すると由紀乃のフェロモンがぶわりと濃くなり、壁のうねりが強くなった。
これは、とても終われないな……
中で再び芯を持ち始めたものをそのままに、由紀乃を仰向けにベッドへ寝かせ、ゆっくりとを腰を動かせていく。虚ろだった由紀乃の目は焦点を結び私を見上る。由紀乃は脚を私の腰に回して微笑んだ。
「いっぱい、して……あっ!」
それから、どれだけの時間貪り合っていたのか。
ヒートが落ち着いた頃には既に日は落ちていた。
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