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12.
「あぅっ…だ、だめ ――…。一樹さんっ……!」
一度目に迎えた絶頂の波は、貞操帯と精路を塞ぐ栓によって阻まれ、要の体内の奥深い場所まで叩きつけるようにして打ち寄せると、真っ白に砕け散った。
「はあぅ…ぁああ…! っあ、ああ……おれ…ま、またっ…くぅ…ぃ、いくぅ…! いっちゃうッ!」
一気に絶頂まで上り詰めた衝撃を、何とかやり過ごせたと思ったのも束の間、射精を遂げられずにいる切ない身体に、快感が頻波の様に次々と押し寄せて来た。
前方だけでなく、後ろも一樹の猛りきった男根で塞がれ、敏感な箇所を絶えず刺激して来るのだ。
射精が赦されない身体は、とろ火から徐々に燃え盛る紅焔となって吹き上がり、要の白皙の肌を焼いた。
掴んだ几帳の『足』から指先が滑り、飴色の髪が花影となって褥に崩れ落ちる。
「かずき、さん…。ああ……ああ……っいい……っ」
喜悦の涙を零しながら、横抱きの体勢で繋がった一樹の鋼色の瞳を見つめた。
「あぁ、んっ…そこ…はぁ…あんっ、きもち、いい……!」
肉付きは薄いが、柔らかな円みを描く臀部に容赦なく抜き差しを加える一樹に縋り付く様に、ほっそりとした腰を振り立てる。
なりふり構わず狂乱状態に陥っている要に、何度も自我を全て持って行かれそうになるのを堪えながら、一樹は言った。
「……もっとだ」
充の手で着けられた貞操帯が、ここまで要を追い詰めるとは…思わなかった。
まるで、充と二人がかりで要を責め嬲っているような感覚に、一樹の心が一層、嫉妬で燃え上がる。
「もっと……俺だけを求めて、縋り付け」
仰ぐ程に隆起し、どくどくと脈打つ男根で貫いたまま、要の脚を掴んで開き、正常位の姿勢を取った。
「………好き、です」
乾いた打擲音が延々と反響する中で、要の澄みきった美しい声が、一樹の耳に届く。
「俺を壊していいのは、あなただけなんです。おれのすべてを…あなたの手で、壊してください」
「要……ッ!」
ねじ回し式の前方の栓を抜く。
どっ、と溢れ出た透明な蜜が抜き差しを加える男根に降り注ぎ、淫猥な水音を響かせる。
深く繋がり合いながら、譫言の様に一樹の名を呼ぶ口唇を吸った。
「要……。君が、好きだ。好きなんだ」
端正な面立ちを痛々しく歪め、しっとりと汗ばむ要の玉体を掻き抱く。
「お願いだ…。俺だけを、みて……くれ」
「一樹さん……」
伽羅色の瞳が見開かれ、やがて、すうっと眦が細められた。
一樹の引き締まった硬い背に、白いしなやかな両脚が絡み付く。
互いの想いと、身体が重なり合う悦び。
官能の愉楽を尽くし、揺曳する二人の内に、やがて脳髄を蕩かす程の狂濤が逆巻いた。
「はあぁ…ぁぁあ…っ!」
共にオーガズムに達し、猥りがましくうねり続ける要の内奥に情欲の滾りを放つ。何度も肩を上下させ、荒い呼吸を繋げた。
ぐったりと褥に横たわる要を見下ろしながら、一樹は腕を伸ばして鏡台の左の抽斗を開けた。
そこには、柔らかく吸水性の良い懐紙が収められているのだが…。
何枚か纏めて取り出すと、鈍く光る何かが落ち、抽斗の取っ手に当たって澄んだ金属音を立てた。
――― 親指の爪ほどの大きさをしたそれは、小さな、鍵だった。
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