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僕は放課後、職員室の七倉先生を尋ねた。
なぜ金曜の夜、「永遠の一瞬」四巻を借りていったのかを聞くためだった。
「ああ、そうね、私のカードで借りたわ」
僕が調べたことを話すと、七倉先生はあっさり認めた。
「先生のカードは……たぶんサンプルとして仮登録されたんですね。だからX年Y組とか適当な値になってた」
「そうそう。DX化のときにお試しで登録してもらったの。変に学年入れちゃうと3年の3月までしか使えなくなるらしくって、特殊なユーザーっていうのを作ってもらった」
「なるほど……。で、なんで『永遠の一瞬』を?」
先生はこれまで「永遠の一瞬」どころか綾村陽香作品を借りたことなど一度もなかったはずだ。それがなぜ金曜夜に急に借りていったのだろう。
「えっとねぇ……教えていいものか悩むところなんだけど」
「……本当なら今日、4組の榊が借りていくと思っていました」
「そこまでわかってるのね……。それもデータベース調べたらわかるのね」
先生は大げさにため息をつき、椅子にもたれた。ギシッと軋む音がした。
「篠崎由衣さんにお願いされたからよ」
先生がある女性の名前を告げた。
「……誰ですか、それ?」
その名前が思い当たらない僕の発言に先生は昔のお笑い芸人のような大袈裟なずっこけを見せた。
「あのねぇ……悲しいこと言わないでよ。貴方たちと同じ学年の子よ。4組の」
「へぇ……で、その篠崎って子がなんで七倉先生に? あれ? もしかしたら榊さんもその子に頼まれてたってことですか?」
「そうよ。いつもなら榊さんがやってくれてた。ただ、金曜に風邪をひいたらしくってね。それも結構重めの」
だから今日も榊はいないのだと僕は悟った。きっと今日も欠席なのだろう。
それから七倉先生は、篠崎由衣のことを話してくれた。
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