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篠崎は、中学1年のときクラスの女子とトラブルがあり(詳細は聞かなかった)、それ以来、学校に来ていなかったらしい。
そんな彼女の家へと通っていたのが委員長の榊エリカだった。
榊なりに篠崎に学校への興味ベクトルを向けてもらうべく、篠崎が読んでみたいという作家の本を毎週図書室で借りては持っていっていたらしい。
それが楽しみとなった篠崎だったが、「永遠の一瞬」四巻を僕が借りてしまったため、その楽しみを断たれてしまったのだ。
そんな四巻は一週間後に返却されたが、今度は榊が風邪をひいてしまった。これでは篠崎は続きが読めない。
どうしても読みたい篠崎は金曜の放課後の校舎へと足を踏み入れた。
既に図書室は閉まっていたので、図書委員顧問である七倉先生に頼み、図書室に入れてもらった篠崎だったが、自宅に生徒証を忘れてきてしまっていた。
「今日借りたい」という彼女の熱意を受けて、七倉先生は自分のカードで四巻を借りたのだった。自分の登録情報が『X年Y組Z番』になっているなど気づきもしなかったのは、パソコンに疎い七倉先生らしい。
「間接的にではあるけれど、柏原くんが四巻を借りていってくれたことで篠崎さんはまず校舎に入るとこまでは来たわね。ありがとう」
七倉先生は篠崎のことを教えてくれたときに言ってくれた。
僕が褒められる言われなどはなく、足繁く通った榊こそが褒められるべきなのだが。
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