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 図書委員の仕事は、単純に言えば図書室の本の管理だ。  新たに入った本を並べたり、返却された本を戻したり、月イチで新聞なんてものも書いたりもするが、まぁ月に一回の仕事だ。簡単な本紹介なんかも書くけれど、そこも大したことじゃあない。  みんなが嫌がるのは「当番」だ。  朝のHR前、昼休み、放課後の三回、図書室の窓口として誰かが座っている必要がある。これを「当番」と呼んでいて、この窓口に座っている間、自分の時間が拘束されてしまうことが、みんなが図書委員を嫌がっている理由だ。  窓口でも本の貸し出しの手続きや問い合わせ対応なんかもするから負担も大きいと思われているところもあるらしい。  が、ここはちょっと違う。  数年前ぐらいから、ウチの高校も名ばかりではあるけれどDX化の教育推進校となり、図書室にあるすべての本はデータベース上で管理されるようになった。  貸出も窓口横にあるパソコンで借りたい生徒が自分で手続きをするだけだ。  何か本を探すにしても、パソコンで検索をかければどこにあるのかがわかる。  これまでの図書委員がやっていた窓口業務は、ほとんどパソコンを通して可能になっているのだ。  が、それでも窓口に誰かがいないと、何かあったときに困るという理由で「当番」制度はなくなっていない。DX化の意味があったんだろうか、という意見もある。  僕はといえば、「当番」を喜んで引き受けている。  僕の趣味であるプログラミングを学校に用意してもらったハイスペックのパソコンで、電気代もただで、空調の効いた部屋で朝や放課後にやっていられる、それでいて「当番」を引き受けることで図書委員のみんなに感謝される、僕にとって図書委員は天職だ。    
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