3

1/4
前へ
/13ページ
次へ

3

 その翌日の月曜日、また僕は朝から「当番」で図書室にいた。  静かな図書室のドアが開きはじめ、沈黙が破られる。窓から差し込む朝の光に照らされて、榊が入ってきた。  返却コーナーに綾村陽香の小説を置くと、そのまま奥の本棚へ消えていく。ほんの数分後にはまた姿を現し、僕の左隣の貸出用PCで生徒証を読み込み、本を借りて出ていった。  僕の四面ディスプレイの左下画面には、『2年4組31番 榊エリカ 貸出:永遠の一瞬③ / 綾村陽香』と表示されていた。「やっぱり本人だよな」と僕は独り言を呟く。  毎週、本を借りていくのに、昨日は「全然、本を読まない」と言った、借りるけど、読んでいない? そんなことをするとしたらどんな理由があるだろう?  委員長の彼女ならば、毎週借りていることで内申アップを狙っている?  本当は小説好きだけど、なぜかあの場では好きであることを隠した?  誰か目当ての人物がいて、その人に近づくため?(それは少なくとも僕ではない)  ちょうど連作モノを借りているようだ。先週は同じタイトルの二巻を借りていたらしい。  僕はなんとなく、あることを思いつく。  その週の金曜日、僕は「永遠の一瞬④」を借りた。  次の月曜日、榊が借りていくはずであろう小説だ。  順番となる小説が図書室になければ、榊はどんな行動をするのだろうか、と。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加