11人が本棚に入れています
本棚に追加
3
その翌日の月曜日、また僕は朝から「当番」で図書室にいた。
静かな図書室のドアが開きはじめ、沈黙が破られる。窓から差し込む朝の光に照らされて、榊が入ってきた。
返却コーナーに綾村陽香の小説を置くと、そのまま奥の本棚へ消えていく。ほんの数分後にはまた姿を現し、僕の左隣の貸出用PCで生徒証を読み込み、本を借りて出ていった。
僕の四面ディスプレイの左下画面には、『2年4組31番 榊エリカ 貸出:永遠の一瞬③ / 綾村陽香』と表示されていた。「やっぱり本人だよな」と僕は独り言を呟く。
毎週、本を借りていくのに、昨日は「全然、本を読まない」と言った、借りるけど、読んでいない? そんなことをするとしたらどんな理由があるだろう?
委員長の彼女ならば、毎週借りていることで内申アップを狙っている?
本当は小説好きだけど、なぜかあの場では好きであることを隠した?
誰か目当ての人物がいて、その人に近づくため?(それは少なくとも僕ではない)
ちょうど連作モノを借りているようだ。先週は同じタイトルの二巻を借りていたらしい。
僕はなんとなく、あることを思いつく。
その週の金曜日、僕は「永遠の一瞬④」を借りた。
次の月曜日、榊が借りていくはずであろう小説だ。
順番となる小説が図書室になければ、榊はどんな行動をするのだろうか、と。
最初のコメントを投稿しよう!