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月曜日の朝、また静かに榊が図書室に入ってきた。
「永遠の一瞬」三巻を返却すると、彼女は奥の本棚へと消えていった。今日はいつもより少し長く奥に留まっていたようだが、しばらくすると彼女が出てきた。
手ぶらだった。
そのまま窓口まで来ると、今日は貸出用PCではなく僕に話しかけてきた。
「あれ、柏原くん」
「ああ」
この前、蒼斗たちとゴハンを食べた男子の名前を覚えてくれていたらしいが、僕が毎週ここに座っていることには気づいていなかったらしい。
「あのさ……、綾村陽香っていう作家の『永遠の一瞬』の4巻ないんだけどさ、借りられちゃっているとかわかる?」
「わかるよ」
僕はパソコンを使い、わざとらしく「永遠の一瞬」四巻の貸し出し状況を検索する。
「次の……金曜日に返却されるね。来週の月曜ならあると思うよ。最近、ほかに借りた人もいないし」
「そっか、来週か。うーん……」
少し眉をひそめて榊は腕組みをした。
「綾村陽香の小説が好きなの?」
「え? いや、そうじゃないんだけど……わかった、ありがとう」
彼女は軽く僕に会釈すると図書室を静かに出ていった。
綾村陽香を好きなわけじゃないけど、毎週借りている? 今度は僕が腕組みをしてみた。
特に新たな事実を得ることなく、僕は木曜に四巻を返却しておいた。次の月曜に四巻を借りに来たとき、何か別の質問をしてみよう。
しかし、次の月曜日、僕は榊に何かを質問することはできなかった。
朝の図書室に榊が来ることはなかった。
たまたま都合が悪かったり、体調を崩してしまったのかもしれない。それならそれでいいのだけど、もっと僕を驚かせることが起きていた。
「永遠の一瞬」四巻が借りられてしまっていた。
借りていったのは、榊ではなかった。履歴にはこんな名前が残っていた。
『X年Y組 Z番 S N』
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