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東海地方にて
Burnとはヤケドの意味。
彼は、妻からのDVに苦しんでいた。
彼は大手自動車会社の技師であった。
上司の娘である妻は私の夫と似ていた。
神経質で疑り深く、毎晩のように彼の体を求めたが、彼は激務による疲労とストレスから、それに応じられない日々が続いた。
やがて、妻の狂気的なDVが始まった。
ある夜、Burnは就寝中、いきなり足先に激痛を感じて飛び起きたら、コーヒーカップを手にした妻が足元に立っていた。
「ごめんなさい。つまづいてコーヒーこぼしちゃった」
そう言う妻の声色は氷のように冷ややかだった。
その出来事が突破口となり、彼のヤケドは日に日に増え続けた。
コーヒーカップを手にした妻の姿を見るだけで、真夜中に家を飛び出し、カプセルホテルに泊まったこともあった。
やがて彼は家に帰るのが怖くなり、もはや会社を首になることを覚悟の上で、妻の父親である上司に、離婚させてくれと申し出た。
答えはNO!
「俺の娘に恥をかかせるな。別居も離婚も認めない」
の一点張りで話し合いは決裂。
その後、彼の妻の暴力は激化した。
熱した油が入ったフライパンを持って彼を追いかけ回し、彼は後頭部から油を浴びせられ背中にフライパンを押し当てられた。
さすがに命の危険を感じた彼は近くの交番に助けを求めた。
病院で手当てを受けた際、医師に状況を説明したにもかかわらず、彼自身がDV被害者であると認めてもらうことは難しかった。
体が大きく力も強いはずの男が、なぜ黙ってか弱い女性の暴力に甘んじているのかを理解してくれないらしかった。
Burnは、やり場のない怒りと悲しみを綴った。
「もし僕が反撃しようものなら逆に訴えられることは目に見えている。それじゃなくても妻は僕に、こう言った。『夜の営みをしてくれないことだって夫婦間ではDVになるのよ』ってね。彼女の父親の権力を行使すれば僕をDV夫に仕立て上げることなど簡単だ。僕は、このまま妻に焼き殺されるのを待つしかないのか。いっそDV夫として訴えられ投獄された方が安眠できる気さえする」
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