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「コマンドはしてあげなかったの?」
「簡単なやつだけ」
初めてのコマンドは、『おすわり』だった。ぺたんと座り込んで祐樹に体をもたせかけたあの瞬間、祐樹の中の支配欲が満たされたあの瞬間、とてつもない快感とともに安心感がジワリと広がったのを覚えている。
もし牧尾に『おすわり』とコマンドしたらどうなるのだろう。そんなことを考えて居ると、それを見透かしたように顔を近づけ「僕にもしてみてよ」とおねだりをする。かかった息は、爽やかなミントの匂いがした。
『おすわり』
誘われるように、しかし恐る恐るそうコマンドしてみれば、牧尾はベッドから降りて祐樹の足元に跪いた。ペタンと尻をつき、床に手を置いたそれは犬のようで。真っ白な肌とスラリと伸びた手足が、美しいボルゾイのようにも見えた。その美しい動物が、祐樹のコマンド忠実に守っている。うっとりとした瞳を祐樹に向けている。それだけでもう幸福感に包まれるけれど、まだ満たされない。
『服を脱いで』
『僕の膝においで』
そうコマンドすれば、少し勿体つけたようにシャツを脱ぎ始める。時には背中を見せながら、時には自らの手を這わせながら、牧尾は肌を露わにしていった。その艶めかしい動きに、またもや祐樹の下半身は熱くなる。そして祐樹と向き合った牧尾もまた、ゆるく立ち上がっていた。
「恥ずかしい?」
「ううん、気持ちいい」
牧尾が足を広げて向かい合うように座ると、祐樹の膝にその体温と重みをずっしりと感じる。その滑らかな腿を撫でれば、祐樹の肩に頭をもたせかけてきた。その首筋にキスを落とせば、少ししょっぱい味がする。
「僕のコマンドでもう涎垂らしてるの?」
「あっ」
予告もなしに牧尾の前を触れば、ヌルついた感触が手のひらに伝わってくる。軽くに義こめば、驚いた牧尾の小さい悲鳴が上がった。握り込んで軽くしごいてやれば、逃げを打つように牧尾の腰が震える。
『こら、逃げない』
尻を掴んで引き寄せそうコマンドすれば、必死にコマンドを守ろうと牧尾の足が絡みついてきた。震えて力が入らないくせに、しっかりと首に手を回し祐樹にしがみついている。その健気さが可愛らしく、祐樹は扱く手を早めた。
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