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性格もセックスも優しい祐樹がそんな動画を買ってまで見ているのには、理由がある。
ランチの後で友人たちと教室に入れば、学生たちがもうまばらに席についている。五人で座れる席を探す傍ら、祐樹の目は違うものを探していた。それはいつも窓側の席に座っている、色白の彼。色素が薄いのか、髪は日光に当てると茶色っぽくも見える。再履修なのか他の学生と話している姿を見たことはなく、いつも静かにスマホを弄っている。あまり交流はないが、名前が牧尾であることは教授が呼んでいるのを聞いて知っていた。
祐樹はその牧尾が、夜の動画のネコであると睨んでいる。
初めはただの偶然で、SNSで見たときに声が似てるなくらいにしか思っていなかった。しかし動画を再生した瞬間、エロの暴力に圧倒された。可哀そうなほど凌辱されている彼は、痛みと快感に喜んでいたのだ。あまり痛々しいのは苦手な祐樹であったが、その時はまさに目が釘付けだった。顔も知らぬ男たちに喘がされ、主人であるDomに情けを請いながら絶頂する。
この世には支配する性のDomと、支配される性のSubがいる。この両者はコマンドにより支配し、されることにより本能を満たしているのだ。なのでパートナー、つまり主従関係を結べば、本来それ以外のコマンドに反応することはない。しかし牧尾も最初は拒むものの、最終的にはタチの思うがままにコマンドを遂行していた。
しかしDomとの仲が悪いわけでもなく、そのアカウントではデートなのか食事に行ったというような投稿が高頻度であげられていた。ならば牧尾のDomは、NTRの性癖でもあるのだろうか。それを動画として残しているのだから、相当なものだろう。まぁ、それを見て抜いている祐樹も人のことを言えた義理ではないが。
まぁだからどうというわけでもないのだが、いつもの物静かな彼とのギャップが激しすぎて、そして乱れ具合に圧倒されて、ついつい動画を見てしまうのだ。そのうち牧尾のことを目で追うようになった祐樹は、この感情が何なのかがわからないでいる。
恋というには下品で、下心というにはピュアすぎる。
祐樹も牧尾とお近づきになりたいわけでもなく、またかけるべき言葉も見つからない。まさか「いつも動画見てます」なんて、口が裂けても言えるわけはなかった。
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