15人が本棚に入れています
本棚に追加
そんなある日、牧尾の投稿が更新されたという通知が祐樹のスマホに届く。アプリを開くと、牧尾しかフォローしていない自分のアカウントが表示された。そして内容を見ていると、一枚の写真が目に飛び込んでくる。薄汚れた便座で、秘部をさらすように開脚した牧尾の写真だった。もちろん牧尾は一糸まとわぬ姿で、恥ずかしげもなくその素肌を露わにしている。そして目隠しをした牧尾の胸には、段ボールで作られたプレートが掛けられていた。
「便所待機中。詳しくはDMで」
数分前に投稿されたということは、まさにいま、牧尾が公衆便所でこの格好をしているのだろう。それを想像するだけで、祐樹の胸はドキドキと煩いほどに鼓動する。
行って確かめたい。そんな気持ちが祐樹の中でむくむくと沸き起こるが、冷静な自分がそんな事をしてどうするのだと制止をかけてくる。無関係な自分が確かめて牧尾本人であったとしても、祐樹には何もできることはないのだ。それどころか、相手に顔を見られて脅されることもあり得る。それが分かっていて、どうしても祐樹は確かめたいという気持ちを抑えられない。
もう一度写真を見てみると、なぜかそこに見覚えのあるような気がしてくる。薄汚れた洋式便器に、同じく薄汚れた壁。しかしその汚れは経年劣化のせいだけではなく、落書きがあるのが見受けられた。それに気づいた祐樹は、その場所を拡大してみる。すると「GIVE YOU HEAVEN」というよくわからない落書きであることに気付く。
「あっ!」
祐樹はとある寂れた公衆便所を思い出した。不良たちがたむろすると噂の公園にある便所で、一度だけどうしても便意に抗えず入ったことがある。そこは大学の近くと言えば近くで、牧尾も知っているはずの公園だった。ならばあの公園である可能性はないでもないはず。
もしかしたら。そんなことを思いながら、祐樹はスマホと定期を握りしめて家を出た。もう時間は九時を過ぎていたが、祐樹にそんなことは関係なかった。大学までは一時間以上かかってしまうが、その間祐樹はずっとそわそわして牧尾のあの痴態だけを考えていた。
最初のコメントを投稿しよう!