15人が本棚に入れています
本棚に追加
街灯を頼りにその公園にたどり着けば、夜の闇に溶けそうな小さな公園は公衆便所の光だけがぼうっと明るくなっている。その光に誘われるように近づけば、次第に複数人の声が聞こえてきた。それはただの話し声なんかじゃなく、快感の甘やかな声に交じってぱちゅんぱちゅんと濡れた音が重なる。入り口付近に祐樹が立てば、その声が牧尾であることがはっきりとわかった。
「んんっ、ん~」
人目を気にしているのか、牧尾はくぐもった声を上げる。きっと口元に手を当てて抑えているのだろう。しかし堪えきれない快感の声が、個室の隙間から祐樹の耳に届いてきた。タチはそれをあざ笑うように、牧尾に囁く。
「ほら、トイレの外にいる人たちに聞こえちゃうよ。マキくんの恥ずかしい声」
その瞬間自分のことを言われたのではと、祐樹はドキリとする。しかし自分の他には誰も見当たらず、タチが牧尾を煽るためについた嘘だとわかった。しかしそれでも牧尾は信じたのか、さらに口をきつく押さえつけ声を殺した。ところがタチは激しく腰を打ち付け、牧尾の体を揺さぶる。
「マキくんの可愛い声につられていっぱい男の人が来ちゃったらどうしようか。全員に犯されちゃうね。嬉しい?」
「も゛……、やだぁ……」
「そんなこと言って、本当は想像して期待してるんでしょ。ナカ、キュンってなってたよ」
「そんな゛ことな゛い゛」
「マキくんは噓つきだなぁ」
タチはラストスパートの入ったのか、出すよ、出すよと告げながら激しく腰を打ち付けた。そして牧尾はと言えば、もはや堪える気力もなくなったのか揺さぶられるままに汚い声を上げている。
「マキ君、僕の、受け止めて」
「やだあ゛あ゛あ゛、イ゛グぅぅぅ」
牧尾はそんな声を恥ずかしげもなく上げたかと思えば、息を詰めるように無言になる。しばらくの間ぱちゅぱちゅという肉のぶつかり合う音がしたかと思えば、大きく息を吐き出す音で終わりを告げた。
「はぁ……。マキ君のお尻、すごく気持ちよかったよ」
身支度を整えると音と共に、タチがそう言葉をかける。しかし牧尾はそれに何も答えなかった。いや、答えられなかったのかもしれない。祐樹はそのやり取りに唖然としていると、カチリと個室の鍵が開く音が聞こえてくる。祐樹はその音で我に返り、慌てて陰に隠れた。
様子を窺うように出入口を見れば、小太りの男が出ていったのが見える。しきりにあたりを気にしている様子を見せながら、男は公園から出ていった。それを確認すると、祐樹も恐る恐る公衆便所の中に入っていく。
最初のコメントを投稿しよう!