動画の彼

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 祐樹はゆっくりと手を伸ばすと、牧尾の赤く染まった頬に触れる。柔らかいそれは夜風にさらされているというのに、比で炙ったかのように熱を帯びている。祐樹が手のひらで包んでやれば、逆に冷たさが心地いのだろう、牧尾は口の端を上げて笑っていた。  牧尾は気配を感じ取るのがうまい。祐樹がまだ戸惑いながら顔を近づければ、項垂れていた顔を上へと向ける。それはまるでキスを待ちわびているように思えて、祐樹はてらてらと光るその唇に吸い込まれるように自身の唇を重ねた。    まずは一つ、挨拶でもするような軽いキス。ちゅっ、というリップ音を残して二人の唇は離れる。それだけで祐樹の心臓は、フルマラソンでも走った後のようにドキドキと早鐘を打っていた。しかし牧尾は物足りないのか、目隠しの上の綺麗な眉毛に皺が寄る。 「ねぇ、もっとして」  直接的な言葉に誘われて、祐樹はまたキスを落とす。何度も、何度も。甘かったはずのそれは次第に祐樹のDomとしての本能を呼び覚まし、牧尾の口内を味わうかのように舌を絡ませていた。 「ん、んんぅ」  牧尾が苦しそうな声を上げたので、祐樹はいったん解放してやる。すると混ざり合った二人の唾液が牧尾の胸元を汚した。それを追うように祐樹は視線を下げると、他人の体液で白く汚された牧尾の胸が現れる。しかしその中にツンと主張する血色のいい乳首に、思わず目を奪われた。いったいどれだけの人間に吸い付かれたのか、可哀そうなほどに牧尾の乳首は腫れあがっている。きっとヒリヒリと痛むことだろう。そんな思いやりの心がある一方で、むしゃぶりついたその中の一人になりたいと思う祐樹もいる。  気が付いた時には、もうその乳首に触れていた。薄い体は肉を寄せても谷間などできないのに、グラビアアイドルなんかよりよっぽど魅力的に見える。指の腹で優しく捏ねてやれば、牧尾は一瞬逃げるように体を捩った。しかし狭い個室で逃げ場などなく、ガタガタと便座が嫌な音を立てる。  
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