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因縁の仲
男が平然と立ち上がり、手に残ったサキュバスの残滓を風に散らした
ビュン
たった今サキュバスを滅した炎の鞭が伸びてくる
「危なっ」
男がスウェイバックして躱す
頭の高さを一陣の炎が通り過ぎたのだ
「ご存知だと思いますが念の為…火って近付いただけで熱いし、下手したら火傷しちゃうんですよ?」
ボヤきながら?説教しながら?それでもあらゆる方向から迫る炎の鞭を
「よ」
「ほい」
「危なっ」
など、軽い調子で躱し続けている
右手に持った長めの曲刀を抜くでもなく、鞘で払うこともなく
ただ、避けるのみだ
かと言って必死になっているワケでもなく、まだまだ余裕がありそうだ
「森の民にしては中々やるようだな?」
延々と続くかと思われた鞭での攻撃を止めた魔族が声を掛ける
「我の鞭を防ぐとは…何時ぞやに森の民の郷でやり合った娘と同じ…否、貴様の方が上か」
「お褒めに預かり光栄ですが…そのエルフの郷って…」
男が口にしたのはとある高位魔族の名だった
「あやつを、バルログを知るとは…貴様あの郷の生き残りか?」
「残念ながらあの郷の出身じゃあないんですけどね…じゃああの時感じたのは、貴方が現界したからなんですね?じゃあ、久しぶり、と挨拶するのが正解でしたか」
口調とは裏腹に、男の纏った空気が急速に冷え始めていた
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