1人が本棚に入れています
本棚に追加
「我は貴様など知らんが?」
「はあ、それは…ではこれなら如何でしょうか?」
「!!!」
サキュバスを物ともせず屠った魔族が後退った
そののんびりした話し方からは想像もつかない、そんな凄まじい殺気が放たれたのだ
ただ抜刀しただけだと言うのに
「貴様…それは、死神をも…」
「漸く思い出してくれましたか?龍女帝のダンジョンでは何度かお会いしましたが、一介の森の民ごとき覚えておられませんよねぇ」
男の言葉が終わらぬ内に炎の鞭が神速で男に伸び、その細い身体を貫かんとした
が
その鞭の一撃は緩やかに湾曲した鞘に容易く跳ね上げられていた
「おのれ…!」
魔族…アークデーモンが鞭を振るう!
自身に死を恐怖させた相手を屠るべく、何度も、何度も!
「悪くないですが…そろそろ姫を迎えに行くお時間ですので。遅れるとご機嫌取るの大変でして…質問をひとつ、ハイエルフの森を配下の魔族に襲わせたのは貴方ですか?」
その言葉と同時にアークデーモンの周囲に男の姿が幾つも現れていた
その数は8つ
「…ハイエルフの森?知らんな…そんな取るに足らぬ集落を何故我が眷属が滅ぼすと考えた?…その程度の分身、まとめて消し去ってくれようぞ!」
その口が古代語で詠唱を開始する
平衡神神殿でグレーターデーモンが唱えたモノとは違う、魔法風が吹き始めるのはより強大な攻撃魔法だと言うことか
「ありがとうございます。…でも、遅いですよ?」
キン
金属音が一度だけ夜の王都に鳴り響いた
「バカな…」
この言葉を最後にアークデーモンは塵になった
大悪魔が最後に見たのは、自身を取り囲むように同時に向かって来る、8つの斬撃だった
「これなら腕が鈍ったなんて言われないはずですよね?」
その呟きを残し、男は姿を消した
最初のコメントを投稿しよう!