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シュッと耳元で刃物が風を切ると、難波の体の奥もキリリと引き締まる。
7月の太陽が痛いほど照りつけるが、それとは関係なく、熱が内から湧いてくる。それが湯気のように立つ。
ブンと少し粗いパンチが繰り出されたので、難波は入身に入り、すかさずその腕を掴んで、本来手首が曲がるべきでない方向へと捻り上げる。
ガァっと唸りながら、相手が難波の体を駆け上がるみたいに蹴り上げてくるので、手首はそのままで、背負い投げのように投げ飛ばす。ガタついた地面にひっくり返った男は、それでも背中を直撃するのは避けられたようで、難波はその回転を利用して、相手の背中に掴んでいた腕をギリギリまで捻って固定した。
「ギブ、ギブ」と男が空いたもう一方の手で、地面を叩くが、難波はニヤリと笑って、腕を釣り上げた。男がたまらず言葉にならない声を上げ、最後の抵抗を試みる。
難波もこれ以上は体がもたないので、手を離した。
男は捻られていた腕を戻し、肩をさすった。
「腕折る気か、この野郎」
生意気なガキは難波に敬意を払わない。そして取り落した模擬ナイフに手を伸ばそうとするから、難波はそのナイフを手の上から踏みつけた。硬いゴムの山用の靴底で踏まれたガキは、難波の足に噛みつこうとして、首を締められて、再び「ギブ、ギブ」と叫んだ。
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