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 新規プロジェクトが始まるというので、朝一番から棟内がものものしい雰囲気で包まれていた。  多くのチームメンバーが通路でうごめいていたが、笑い声一つない空気は張り詰め、小さくこそこそとあいさつし合うだけの静けさは重たかった。  プロジェクトの概要や活動の具体的内容を知った人間のうち、犯罪者と決まっていない人間を拘束する理不尽な活動へのとまどいで、思わず沈黙してしまったのも少なからずいるに違いなかった。  裕丈は、そもそも他チームにまともな面識はなく、指揮監督室の単独チーム統括リーダーのフレッドとたまに会って話すか電話で連絡を取り合う以外は、特に誰とも会話をすることはなかった。  よって、まだ参加する日時、場所を知らされていない現状では、とりあえず食堂辺りでコーヒーでも飲んで静かに待機する他なかった。  今朝の食堂は、人影が少なく閑散としていた。  彼はバットケースと風呂敷包みを隣の座席に置くと、紙コップのホットコーヒーを傾けつつ、周りに目を配り、聞き耳を立てた。他のチームの会話等で裕丈は、情報収集をはかっているのだった。  その他、思考を整理するにも、この朝の時間を習慣的に大事にしている。
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