推しクライシス

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推しクライシス

 五か月後。  久々に家で両親と夕食をとってたら、いきなり仁葉からDMが届いた。 『すぐにニュースを見て。そこから逃げて!』  両親にも届いたみたい。 「虹菜、ちょっとお願い」  ママに急かされて、すぐそばにあったリモコンを手に取り、ふだんはめったに見ないテレビを点けた。  アナウンサーが叫んでいる。  いくつもの大国が、次々にマオ推しかミカ推しかを表明して対立する国に攻撃を始めました、世界中の大都市が、隣りの国のミサイルの照準に入っています、だって?  唖然としてニュースを見ていたら、パパがワタシの手を引っ張った。 「車で逃げるぞ!」  大急ぎで荷物をキャリングケースに詰めて、パパの車に乗る。  周りの家も似たような騒ぎに陥っているみたいだ。  やっぱりというか、郊外へと向かう広いバイパスは、とっくに同じような車で大渋滞になっていた。  延々続く車の列。  時間が経つばかりで、動きそうにない。  イライラしたヒトが、クラクションを鳴らす。  暗くなっても渋滞は終わらなかった。  結局、車の中で夜を過ごすことになってしまう。
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