28人が本棚に入れています
本棚に追加
パパがトランクから、荷物をくるむのに使ってる古いブランケットを出す。
「えええっ、ほこり臭いよ。これで寒さをしのぐの?」
しかたないんだけど、ついつい文句が出た。
「ごめんな、暖房つけてるとバッテリーが持たない」
パパはあやまってくれるけど、でも……。
結局、眠気と寒さには勝てなかった。
ブランケットを顔から遠ざけて、ヘアクリップで鼻をはさんでうつらうつらしてるうちに、空が明るくなってきた。
いきなり、空で雷みたいなすごい音が響いた。
バックシートで跳び上がる。
おそるおそる、車のドアを開いて見上げた。
緑色の筒みたいな影が、何十本も上空を飛んでいく。
パパも運転席のドアを開いた。
「あれは……ミサイルだ」
まぶしそうに目を細めて、つぶやく。
続いて、ごうごうと地鳴りが聞こえてきた。
煙混じりの突風が襲ってくる。
バイパスの向こうを見ると、別のミサイルの群れが、長く高く煙を引いて、空へと向かっていく。
「駐屯基地から迎撃ミサイルが発射されたんだ」
最初のコメントを投稿しよう!