推しクライシス

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 パパがトランクから、荷物をくるむのに使ってる古いブランケットを出す。 「えええっ、ほこり臭いよ。これで寒さをしのぐの?」  しかたないんだけど、ついつい文句が出た。 「ごめんな、暖房つけてるとバッテリーが持たない」  パパはあやまってくれるけど、でも……。  結局、眠気と寒さには勝てなかった。  ブランケットを顔から遠ざけて、ヘアクリップで鼻をはさんでうつらうつらしてるうちに、空が明るくなってきた。    いきなり、空で雷みたいなすごい音が響いた。  バックシートで跳び上がる。  おそるおそる、車のドアを開いて見上げた。  緑色の筒みたいな影が、何十本も上空を飛んでいく。  パパも運転席のドアを開いた。 「あれは……ミサイルだ」  まぶしそうに目を細めて、つぶやく。  続いて、ごうごうと地鳴りが聞こえてきた。  煙混じりの突風が襲ってくる。  バイパスの向こうを見ると、別のミサイルの群れが、長く高く煙を引いて、空へと向かっていく。 「駐屯基地から迎撃ミサイルが発射されたんだ」
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