推しライジング

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 ワイヤレスホンを耳にさすと、ネイルみたいにきらきらして、白い指みたいに繊細で、どこまでも透明で、ココロおどるエモいメロディーが流れてきた。  え、すごくイイ。 『こっちのSNSにもあるよ』 沙希はミカの投稿のリンクを次々送ってきた。 歌、ダンス、ファッション。何だかどれも好き。 『いいね、今日からミカ推しになる』と返す。  3つ前の席から沙希が振り返り、長い袖に隠れている右手をふった。 薄茶のロングヘアがゆれる。 『きのうまではバスケ部のソウ推しだったのに。さすが気まぐれ虹菜』 とDMが届いた。  ざわめきの気配を察知した教師が、初めて教室の方を向いて、ぐるりと見渡す。  ふたりともあわてて教科書を開いて、顔を隠した。  その3日後。
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