推しエネミー

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 一瞬喜んだけど……。 『口座があれば貯金を増やせるよ。お小遣いで始められて入会特典もある↓』  よくある詐欺コメみたい。リンクが貼られてる。  続きが来た。 『アカウントを乗っ取られたんじゃないよ、ビデオ通話にする?』  画面に現れた沙希の顔を見て、ほっとする。  でも、何だかメークが濃くて荒いみたい。  髪も傷んで見える。  互いに小さく手を振ってあいさつ。それから、 「うーん、この話どうかなあ」と返す。  そしたら、とたんに沙希はキレてしまった。 「へえ、持ってるヒトは選べるんだね」  さすがのワタシも、カチンときて荒ぶる。 「なにそれ」  すると、沙希も荒ぶり返す。 「持ってない沙希は選べないよ」  画面がぶれる。 「両親がミカ推しかマオ推しかで離婚して、それから6畳2間のアパートに引っ越し。昼も夜もバイトでくたくた。これからは、マオのオススメの通りにする」  ビデオ通話は一方的に切られた。  沙希がマオ推しになった?  気づかないうちに、ふたりの間にミゾができてた。 『ごめん、ワタシはマオを信じない』と返す。 『そうやって距離感作ってマウントとるんだ』 『ちがう、ワタシはミカ推しだから』  ホントそれだけ。  わかって。  念じて沙希の返事を待つ。  でも、もうスマホは震えなかった。
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