叔父様は箱庭から逃げられない

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 砂まみれになった髪を手ぐしで整え、スウェインはひとり、とぼとぼと道を歩く。もみくちゃにされ、有り金どころか髪紐もベルトさえも取られてしまった。さすがに哀れに思ったのか、近くで見ていた老人が駅への道を教えてくれたことだけが救いである。貧民の施しなど受けたくはなかったが、そんなことを言っていられる状況ではなかった。 「あの小生意気な小僧どもめ……袖までちぎるなど、どうかしているのではないか!」    シャツのボタンは半分ちぎられ、袖も片方破かれた。ベルトを抜かれたスラックスは手で押さえなければ落ちてしまいそうだし、控えめにいって、スウェインはこの上なくみすぼらしい格好になっていた。  そういえば、甥も昔はよくこんな格好をしていたものだ、とふと思い出す。 (あの性悪な甥も、こうして町に落とされたことがあったのだろうか。気味が良いな)  兄――甥にとっては父だが――を亡くして間もないころ、アランはよく隠れるように地下室で膝を抱えていた。
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