手が痛い男の話

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手が痛い男の話

 あるところに、手に()れ物ができた男がおりました。木こりなのに商売道具(しょうばいどうぐ)(おの)(にぎ)れず、(こま)っていました。 「ああ(いた)い。これじゃあ仕事どころじゃない」  すると、白いドレスを()た女の子がやってきました。スカートの(すそ)を持ち上げ、「ごきげんよう」とご挨拶(あいさつ)。 「おじさま、どうしたの? お(つら)いの?」  可愛(かわい)らしく(くび)(かし)げ、男にたずねます。 「ごきげんよう、お(じょう)さん。右の手が、痛くてね」 「まあ、かわいそう。今、お手当てしてあげましょう」  そう言うと女の子は、斧を(つか)み取って男の右手首から先を切り落としました。男は血を(なが)し、(ひざ)をつきます。 「ああ、手首が!」 「たいへん、お(つぎ)は手首が痛いのね」  そう言うと女の子は、今度は(ひじ)から先を切り落としたので、男はもっとたくさん血を流して(はげ)しく(うめ)きます。 「ひ、肘が! 俺の、肘がっ!」 「肘がなくなれば、痛みもなくなるかしら?」  女の子が繰り返し斧を振りおろすたび、白いドレスはみるみる赤く()まっていきます。とうとう(かた)から先までなくした男はもう、まともな言葉を話せません。悲鳴(ひめい)をあげ、地べたの血()まりの中で、のたうち(おど)るばかり。 「えっ? 今度(こんど)は肩が痛いって? 困ったおじさまね。でも切る部分なんかすっかりなくなってしまったわよ。あっ、そうだ! いいこと思いついた! この(さい)だから痛くなるところは、ぜんぶ切ってしまいましょうか!」  女の子は男に(よろこ)んでほしくて、治療(ちりょう)頑張(がんば)りました。 「ほら、ね。これでもう、どこも痛くないでしょう?」  女の子の言うとおり、首だけになって地面に(ころ)がった木こり男はもう二度と、痛みを感じなくなったのです。
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