53人が本棚に入れています
本棚に追加
手が痛い男の話
あるところに、手に腫れ物ができた男がおりました。木こりなのに商売道具の斧も握れず、困っていました。
「ああ痛い。これじゃあ仕事どころじゃない」
すると、白いドレスを着た女の子がやってきました。スカートの裾を持ち上げ、「ごきげんよう」とご挨拶。
「おじさま、どうしたの? お辛いの?」
可愛らしく首を傾げ、男にたずねます。
「ごきげんよう、お嬢さん。右の手が、痛くてね」
「まあ、かわいそう。今、お手当てしてあげましょう」
そう言うと女の子は、斧を掴み取って男の右手首から先を切り落としました。男は血を流し、膝をつきます。
「ああ、手首が!」
「たいへん、お次は手首が痛いのね」
そう言うと女の子は、今度は肘から先を切り落としたので、男はもっとたくさん血を流して激しく呻きます。
「ひ、肘が! 俺の、肘がっ!」
「肘がなくなれば、痛みもなくなるかしら?」
女の子が繰り返し斧を振りおろすたび、白いドレスはみるみる赤く染まっていきます。とうとう肩から先までなくした男はもう、まともな言葉を話せません。悲鳴をあげ、地べたの血溜まりの中で、のたうち踊るばかり。
「えっ? 今度は肩が痛いって? 困ったおじさまね。でも切る部分なんかすっかりなくなってしまったわよ。あっ、そうだ! いいこと思いついた! この際だから痛くなるところは、ぜんぶ切ってしまいましょうか!」
女の子は男に喜んでほしくて、治療を頑張りました。
「ほら、ね。これでもう、どこも痛くないでしょう?」
女の子の言うとおり、首だけになって地面に転がった木こり男はもう二度と、痛みを感じなくなったのです。
最初のコメントを投稿しよう!