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「あ……」
職員室から出たところで菊川先輩と一緒になった。
でも、俺を認識したはずの先輩は特に反応もなく目の前を通り過ぎる。
「先輩!」
ちょっとそれはショックで声をかけると、一応止まって振り返ってくれた先輩。
「えっと、あの……」
だが、何も考えていなくて言葉に詰まってしまった。
「用がないなら帰ってもいい?」
本当、優しさなんて微塵も感じない言い方。
なのにこの先輩の笑顔が見てみたい……なんて思ってしまう。
「いや、できれば……今度スコアの付け方教えてもらいたいんですが」
「何で?経験者なら知ってるでしょ?」
窺うような目。
かなり警戒されている気がするのはなぜか。
「いや、バスケ経験者だからってスコアできる訳ではないんで」
「……」
本当は中学でも少しマネをやっていたから全くできない訳ではない。
だが、正直、中二で事故に遭って右肩を怪我したあの日、俺の中でバスケは終わった。
どちらかと言えばもう関わりたくはなくなった。
俺のポジションに他の奴が入っているなんて耐えられなかったから。
そう思ったのにドリブルのあの音が聞きたくて、ボールの感触が忘れられなかった。
それでかなりヤケになった俺にちょっと困ったような顔で声を掛けてきたのが力也だった。
顧問とも話してマネになって……でも、どこかでずっとイライラしていた俺。
スコアだってかなり抜けたヒドいもんだった。
大体じゃダメだ。
今の知識ではあのチームには申し訳ないから。
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