しんでいる。

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 それは、ある日の朝のホームルームで始まった。  霊能力者を育てることに特化した、私立紫ヶ丘高等学校。ここは全寮制であり、日本各地から集められた霊能力の素質がある子供立ちが、エキスパートである先生から幽霊を感知するスキルや除霊のスキルをを学ぶという学校になっている。  二年二組の教壇の前に立った牧野(まきの)先生が、とても悲しそうな声で言いだしたのである。 「実は、大変なことがわかりました。このクラスの、死者観測機が作動しているのです。最初は教室に設置した機械が壊れてしまったのかと思ったのですが、どうやらそうではないようで……」  牧野先生は、ざわつく生徒達を見回して続けた。 「このクラスの中に、死んだ人が混じっているようです。……霊能力者を育てる学校でありながら、なんて恐ろしいことでしょう。今の今までそれに気が付かなかったことを、私達は恥ずかしく思わなければなりません」 「し、死んだ人が!?」 「え、死んでるのに、幽霊だって隠して学校に通ってる奴がいるってこと?」 「もしくは、最初から幽霊だったのに誤魔化してたかどうかだな……」 「いや、そもそもさすがに普通に授業受けてるってのはないでしょ。きっと姿を消して、このへんを漂ってるってことなんだよ」 「漂ってるって言っても、それを俺らが見えないのってだいぶ問題じゃね……?」 「えええ、もう一年以上通ってるのに気付かなかったなんて超ショックー」 「幽霊って誰?お前じゃないよな水野ー?」 「幽霊はトイレに行かない!私今日踏ん張ってきたから違いまーす!」 「先生、そこの人達が朝っぱらから下品な話してまーす」 「はいはい、皆さん静粛に!」  訓練もかねて、学校のあちこちには幽霊を感知できる測定器が設置されている。測定器の数値が触れている場所には幽霊がいる可能性が高いのだ。  大きく数字が触れていることにみんなが気が付いていたが、装置が壊れてしまっただろうとばかり思って無視していたというわけである。まさか本当に、この教室に幽霊が混ざっているだなんて。  幸いなことは、霊能力者のタマゴたちであるため、幽霊だと聴いても怖がるような生徒がほとんどいないということだろうか。 「今日は緊急で、学年主任の(あずま)先生が二者面談を行います。呼ばれた人は速やかに面談室に向かってください」 「はーい」  みんな、気楽なものだった。  恐らくこれで堂々と授業がサボれるラッキー!くらいにしか思っていないのだろう。 「幽霊を見たという人。もしくは……自分が幽霊だ、という人。正直に、東先生に告白してくださいね。生きていても死んでいても、皆さんが私達にとって大切な生徒であることに代わりはないのですから」
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