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……御木本遊里です。よろしくお願いします。
……その。お願いが。
この面談室、外に……音、漏れたりとかしてません、か?大丈夫ですか?……良かった。じゃあ、お話します。
あ、そうだ。一つ教えて欲しいんですけど。
僕以外のみんな、装置の数字がおかしいって気づいてたのにスルーしてたみたいなんです。このクラス以外の教室はどうなんですか?……そう、ですか。じゃあ……どうしてこの教室の測定器がおかしいって気が付いたんですか?
外部講師の人が指摘した?ああ、そっか、そういうことなんですね。合点がいきました。
多分ですね。その方が指摘しなかったら、誰も装置がおかしいことに気づかなかったと思うんです。
気付いていたけど、故障だと思ってスルーしてた――ってみんな言ってるけど、本当は“都合が悪いから見えていなかった”だと思います。
人間って、そういうものなんです。
誰もが真実が欲しいと言いながら、実際は自分に都合の良い真実しか見えない。見えないことで己を守る。それは、おかしなことでもなんでもありません。
僕は、気づいていても怖くて何も言えなかった。
数値がおかしくなったの、修学旅行からみんなが帰ってきてからです。僕はこの通り体が丈夫じゃなくて、病気がちなものだから……あの時も熱を出して、修学旅行に行けなくて。
先生も、きっと気づいてないですよね。
あの死者観測機の針が振りきれてるの、うちの教室だけじゃないですよ。
僕、東先生を信じて告白します。
多分、僕以外の全員が幽霊です。
バスの事故かなにか、覚えがありませんか?
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