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勿論、本気でそんなことを考えているわけでもない。しかし過去、クラスメートの女の子が“何でこの人と!”と思うような大嫌いなクラスの男の子とペアだと発覚し、大泣きしている現場なんてものも見たことがあるのだ。
生理的に受け付けない相手とペアになってしまう可能性はいつもついて回っている。そんな現実を知ってしまうくらいなら、このまま出会うことなく死んでしまうのも一つの選択ではなかろうか。実際、法律に抵抗して二十歳や二十五歳の手前で自殺する人も少なくはないと聞いている。
ちなみに、この法律が出来てから“強姦を伴う性犯罪”だけは圧倒的に減ったとのことだ。というのも、男が女をレイプして子供ができると、レイプした男のみチップが反応して死亡することになるからである。法律で定められていない子供を作る行為を強行した罰というわけらしい。
――嫌だな。好きでもなんでもない相手と子作りとか。マジで気持ち悪い。
今。好きな相手がいるわけでもなんでもないけれど、でも。
――ほんと、何でこんな法律なんかあるんだか……。
ぶるるるる、と突然勇気のポケットで鈍い音がした。はっとして見れば、スマートフォンが震えているではないか。
着信。相手は、鶴岡ミコ。小学生の時からの、幼馴染の少女である。メールやLINEは頻繁にしていたが、電話してくるというのは正直珍しい。
「もしもし?どうしたミコ。珍しいな、お前が電話なんて」
予感がしたのかもしれなかった。勇気はベッドに腰掛けると、努めて明るい声で着信ボタンを押す。
『もしもし……勇気、くん?』
電話の向こう。か細く震えた声が聞こえた。時折鼻をすするような音も聞こえてくる。何かあった、と確信するには充分だった。
『どうしよう。私、私……』
「落ち着け、ミコ。まずは深呼吸な。俺も今時間あるし、たっぷり話聴いてやれるから。大丈夫、此処にいるから」
『勇気、くん。ありがとう……でもね、あのね……』
彼女をどうにか、落ち着けるまで数分。
『私……ペアリングの相手、見つかったの。どうしよう、どうしよう、どうしよう……』
彼女から衝撃的な告白が聴こえてくるまで、さらに数分が経過してからのことだった。
『私のペア、女の子だった。……しかも友達。友達と、恋人になんか……なれないよお……!』
このペアリング制度には、ある大きな問題点がある。
その問題点を皆がわかっていながら“発生事例が比較的少数だから”という理由だけでスルーしているのだ。
そう。
ペアリング法では時々、同性同士でペアリングされてしまうことがある。
そうなった時は子供を作るため――カップルのどちらかは、性転換手術をしなければならなくなるのだ。本人の性自認も、趣向も無視して。
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