<2・告白。>

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<2・告白。>

 幼馴染とはいえ、自分達は付き合っているわけでもなんでもない。本人は家に来てもいいと言ってくれたが勇気のほうが遠慮した。いくら家族と同居していて、ミコの家族とは家族ぐるみの付き合いがあるとは言っても、だ。  しかし本人が“また泣いちゃうかもしれないから、外に行くのはちょっと”と言ってきた。流石にこれでは、外に連れ出すのも酷というものだろう。少しだけ気後れしたが、結局俺は彼女が家族と同居しているマンションに足を踏み入れたのだった。  ミコとは小学生の時からの付き合いになる。  今でこそ人並みに身長も伸びたが、当時は勇気もミコも体が非常に小さかったのだった。それで、並以上の体格のガキ大将たちに虐められることが少なくなかったのである。特に小学校低学年の時は、頭が幼稚園児の延長みたいな連中に悩まされたものだった。  ミコはいつも泣いて、勇気の後ろに隠れることが少なくなかった。俺はといえば――戦隊ヒーローに憧れるタイプであったこともあり、ただ苛められて終わるほど大人しい性格でもなく。ようは、毎回めっちゃくちゃ反撃したのである。  力はなかったが勇気は足が速かったし、自慢じゃないが諦めの悪さと意地っ張りなところには定評があった。いくら殴っても蹴っても立ち上がってきて、しまいには股間を集中攻撃してくるような奴である(そして、向こうを逆に泣かせることさえあった)。相手も嫌になったのか、二年生の終わりには勇気とミコにつっかかってくる奴らもいなくなっていたのだった。 『いいか、ミコ!泣いてたって、運命は変わってくれないんだぞ!八ッピーエンドは、自分で作らなきゃ駄目なんだ!』  勇気は大好きなヒーローの台詞を引用して、ミコを励ました。ミコはその度に言ってくれたものである。 『ありがとう、勇気くん。勇気くんは……私にとって、最高のヒーローだよ』  あれから、もう何年が過ぎただろう。  自分もミコも大学生になった。世間一般的には成人と呼んで差し支えない年齢である。ミコは昔のようにめそめそ泣いたりしなくなった。料理が得意で、笑顔が可愛くて、みんなに愛される素敵な女性になったと思う。まあ、幼馴染の贔屓目が入ってないとは言わないが。  中学高校と同じ学校に進み、大学からは別々の学校になった。彼女は栄養士になりたくて、そちらの専門科がある学部へ進み、勇気はといえば将来なりたいものを見つけられないままなんとなく文学部に進んで今に至っている。家が近いので、大学に入ってからも何度か顔を合わせることもあった。彼女もまたペアの相手が見つかっていないらしい、という話は聞いていたのだが。
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