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――まさか、同性とは。
ミコの家に上がり込む。今日は土曜日で、両親は二人揃って出かけているらしい。リビングに通され、ミコにはコーヒーを出してもらった。
「勇気くんのことだから、どうせブラック飲めないんでしょ。ミコ様が、あまーいカフェオレにしてあげましたからねー。ミルクたっぷり、砂糖とシロップ大量投下ー」
「うるせえ!お前だって辛いカレーとか食べられないくせにー!」
「残念、私は中辛食べられるようになりましたー!」
「自慢するほどのことかよそれは!」
勇気が家に行く頃になると、ミコも少しは落ち着いたようだった。涙の跡が痛々しいが、笑顔が戻ってきている。これなら落ち着いて話もできるだろう。正直、電話だけではあまりにも要領を得なかったからである。
彼女のペアリング相手が見つかった。
それが大学の友達で、女のコだった。
現在勇気がわかっている情報はそれだけである。
「色々、ごめんね。急に来てもらっちゃって」
多少の雑談を経て、本題に入ることになった。ミコは左手の中指につけたリングを見せてくる。銀色の指輪に、政府公認を示す星の紋章が入っている。一見するとただの星マークに見えるが、ここには偽造防止の最先端技術が使われているらしい。
ちみにペアリング法の名前のせいで誤解されるが、判別するアイテムは指輪とは限らない。アイテムの種類は親や本人にある程度選択権があるし、本人の障害などにも配慮されることになるからだ。当たり前だが指がない障害を持っている人に指輪を渡しても、身につけておくことが困難であるからである。
とはいえ、一番手近なアイテムだからか、指輪形態で持っている人は少なくない。俺も指輪だし、ミコも指輪だったと言うわけだ。
「指輪って、ちょっと不便だよね。これ失くしたら、再度手続きしなきゃいけなくてめんどーだし」
やや空元気の笑顔を浮かべてミコが言う。
「だから、子供の頃は身につけてない人が多いんだよね。私もそうだった。高校卒業してから慌てて身につけることが増えたってかんじ。しかも……この指輪って肌に触れてないとセンサー働かないんでしょ?だからトイレとかで外してたら意味ないんだよね。私は調理実習の時とかも外しちゃうし」
「まあ、それが普通だよな。……だから、友達がペアだって気が付かなかったのか」
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