<2・告白。>

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「うん。同じ学部の、木内真依(きうちまい)ちゃって言うんだけど。同じ班で実習やったりしてて、サークルも一緒で仲いいんだ。一緒にいること、多かったと思う。でもお互い、リング外してること多くて……だから、だろうね。半年過ぎてから、まさかペアだなんてわかるとは思ってなくて」 「……そっか」  嫌いな子でははない、というのは彼女の話からも伝わってくる。真依という女性とならば、一緒にいることも辛くはないのだろう。  でも。  友達でいることと、恋人になることはまったく別問題なのは間違いなくて。 「……真依ちゃん、凄く良い子なの。リングの音っぽいのが鳴って、びっくりして私が泣いちゃっても……そばにいて励ましてくれて。本当は真依ちゃんだってショックだったはずなのにね。だって……コレでわかっちゃったんだもん。運命共同体なんだって」  大切な友人が、ペアの相手だった。それはある意味で残酷なことなのかもしれない。  何故なら自分一人で命のあり方を決めることができなくなってしまったからである。己がペアに鳴ることを諦めて子作りを拒めば、相手も命を落とすことになってしまう。迷惑をかけないようにするためにはまだ時間の猶予があるうちに自殺するしかない。――二十五歳ぎりぎりでミコが死ねば、相手は次のペアを選んでもらったところで探す猶予がなくなり、タイムリミットで命を落とす可能性が高いのだから(無論、その場合は向こうも特例でなんらかの救済策を用意してくれる可能性もあるが)。  生きて相手の命を救いたいなら、恋人になるしかない。たとえその相手が、恋愛対象になることのない同性であったとしても。 「女の子同士でペアにされちゃった場合」  悔しそうに、テーブルの上で拳を握るミコ。 「決めなくちゃ、いけないんだよね。どっちかが男の人になって、どっちかがその人の子供を産まなくちゃいけない。私、調べたの。生殖能力と遺伝子情報を維持したまま性転換手術をすることはできるけど……脳の仕組みまでは変えられない。だから、女の子の心のまま、男の人にならないといけない。それで結局ペアとセックスができなくて、ふたりとも亡くなってしまうこともあるって」 「そりゃそう、だよな。体と心がチグハグになっちまうんだから」 「そもそも手術に失敗して死んじゃうケースもあるらしくて。……考えれば考えるだけ怖くなっちゃって。私、自分が男の子になるなんて考えられない。おっぱい取るのも、オチンチンつけるのも絶対嫌。でもそれはきっと、真依ちゃんも同じ。そんな苦しみを真依ちゃんに味わってほしくないし、真依ちゃんが男の子になったからって男の子として見られるかはわからないし……」 「ミコ……」
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