<3・招待。>

1/5
前へ
/54ページ
次へ

<3・招待。>

 ミコにはああ言ったが。  勇気とて、現状に納得しているわけではないのだ。なんとか、彼女とペアの女性が救われる方法がないものか。同性でペアリングをしておきながら、片方に性転換して子供を作れなんていくらなんでも無茶が過ぎるというものである。いくら異性でペアリングされるより確率が低いとはいえ、前例がいくつもあるのに何の対策もされていないというのは流石におかしい。  何か抜け道はないものか。大学で、家で、出かけ先で。それとなくネットで情報を集める日々が続いた。 ――そもそも、ペアの相手っていつ決まるもんなんだ?  勇気はふと気になった。  生まれた時にペアが決まっている、みたいなことをよく言われるが。その理屈で行くと、例えば四月一日に生まれた赤ん坊は、同年三月三十一日以前に生まれた人としかペアリングができないことになる。当たり前だが、未来にどんな遺伝子を持った赤ん坊が生まれるかなんて完全予測はできないからだ。  そして逆に、三月三十一日に生まれた赤ん坊は、産まれた時点で四月一日の赤ん坊とのペアリングは不可能である。四月一日に生まれる赤ちゃんが己とマッチする遺伝子を持っているかなんてわかるはずもないからである。  とすると、遺伝子のペアが決まるまでは、産まれてから多少時間がかかっていると考えるのが妥当だ。遺伝子登録をされるのは赤ん坊の時であったとしても、当然子供を作る活動ができるようになるまでは十数年以上の月日を経る必要があるからである。男も女も、二次性徴を迎えなければ子供は作れないし、流石に倫理観に反するというもの。実際、子供を作れとは言われるものの、二十歳から二十五歳の間にしろというのが暗黙の了解となっている。  ちなみに、昔より遥かに減ったとはいえ、今でも生まれつき子供の作れない体の男女というのは存在する。そういう人のみ、診断書を貰って認可を受けることにより、一生子供を作らなくても処罰されることがなくなるのだと聴いていた。 ――あ、あった。  部屋でスマホを確認していた勇気は、そのブログを見つけることになる。  ブログ主は、“ペア相手がいつ決まるのか?”について興味を持ち、友人知人や家族の協力を得てデータ収集を行ったという。  いつペアが決まるのか?がはっきりしない理由の一つが、小さな赤ん坊や子供のうちはリングを身につけていないことが多いからである。というか、赤ん坊の場合リングなんかつけたらうっかり飲みこんでしまう危険性もあるし、そうでなくても紛失しやすいことだろう。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加