ちいさなバレンタイン

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   ◆◇◆  学校でチョコを渡すのは、けっこう勇気がいる。  いかにも手作りだし、笑われちゃうかな。受け取ってもらえるかな……?  ――今日、一緒に帰ろ。玄関で待ってる。  ――おう。  …………って。  ね、キミ。今日が何の日なのか、知らないわけじゃあないよね??  な ん で、そんな通常対応なの(涙目)  ふっ、と見上げた空は雲間が晴れて、光がまぶしい。  どきどきして、胸がくるしい。  はやく来てほしい。  来たら困る気もする。  どうしよう。何て言おう……?  ――――キィィッ (!!!!)  鍵のかかっていないほうの生徒玄関の扉がひらいた。  ああ、わかってしまった。  ドキドキが最高潮になって地面を見つめるわたしの隣で靴が止まった。覗き込む。影が差す。 「よ。待たせ…………あっ」  ちらっと見上げる、キミの頬が赤くなる。  どんどん赤くなればいい。きっと、わたしのほうが何倍も真っ赤なんだから。 (〜〜お願いだから、この期に及んで『くれんの? おれに?』とか、追い打ちかけないでよね!!?)  ごくっと喉を鳴らして、両手で差し出した。  赤いラッピングのチョコガナッシュ。 「あげる。ハッピー……バレンタインっていうの? キミに、あげたかったから。もらって」 「まじか……、うん。サンキュ」  にこっと笑うキミが、照れくさそうに受け取ってくれた。 「やべ、今まででいちばん嬉しい」 「! ほんとう? よかった」  胸が熱い、熱い。  なんかもう、ほんと、神様ありがとう。  かみしめた気持ちがいっぱいになって、手を繋いでくれたことがうれしくて。  わたしは、つい、そのままの帰り道。  キミに『好き』って言っちゃった。  ◆おしまい◆
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