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「ってか、どうしたの。徳田くん、年取ったみたいに見えるんだけど」
ついはっきりと言ってしまった。なんらかの冗談でそういうメイクをしているのかと思ったのだ。しかし、徳田は思い切り口を尖らせた。
「なんだよっ、それって俺だからいいけど、それを裕子さんに言ったら殺されるぞ。俺は助けないからなっ」
なんとなく周囲の気温がグッと下がった気がした。裕子は不敵の笑みを浮かべて座っていた。口元だけが笑っているようだが、こういう時は絶対に怒っていると雪江が1番よく知っていたはずだ。
「え、あ、違います。裕子先輩は年取ったなんて全然思っていませんから。まじで十日ぶりですよね」
そう言っても裕子の表情はぴくりともしない。まずい。なんとかここはごまかさなければ。
「徳田くんも、裕子先輩と一緒にタイムスリップしてたんだ。私だけじゃなかったんだね。もしかして先生たちのことも知ってる?」
すると裕子が怪訝そうな顔をする。
「あら、雪江ちゃん、もう先生に会ったんじゃなかったかしら」
「え? いつだろう」
雪江が首を捻っていると関田屋がニコニコしてやってきた。
「あっ」
今ならわかる。関田屋は、日本史の教師だった朝倉の目元そのものだった。
「ごめん、先生。さっきはすぐに気づかなかった、マジでごめん」
「いや、あの時はその方が良かった。元内さんがいたからな。あの人は俺たちのことを知っているけど、こんなふうに再会の話ができなかっただろうから」
「久美子先生もいるわ。雪江ちゃんが見つかってよかったって言ってる」
「探してくれていたの?」
「そうよ。ずっと探してた。いつ現れるかわからないから、その時がきたらすぐに会えるように準備はしていたの」
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