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久美子が白地に赤い薔薇の模様のティカップに白く褐色の液体を注ぐ。
「はい、召し上がれ。裕子さんに教わったの。うまくできてるといいけど」
そう言ってその一杯めを雪江の前におく。
「ありがとうございます」
それぞれがお茶を味わいながら、丸いテーブルを囲んだ。雪江はうるうるしそうになったが、お茶を飲むことでなんとかごまかす。
朝倉がこれまでのことを話し始めた。
「まず俺が今から四十年前の江戸にやってきた。どうしたらいいか困っていたところを先代の関田屋の当主が拾ってくれた。妙な格好をした得体の知れないこんな俺をな。そのお礼に呉服の流行や儲けかたを教えてかわいがられた。それで一人娘の婿になったというわけだ」
「四十年前」と雪江はつぶやいた。
「うん、日本史に詳しい俺がまずここへ来て、みんなが来た時の基盤を作るためだったんだろうなって今なら思える」
徳田も口を開いた。
「俺たちは今から十五年前に来たんだ。気づいたら関田屋さんの店の前に立ってた。その時はもう先生は当主として顔をきかせてたから頼りになったぜ。その翌年、久美子先生も現れて、医療面でのサポートをしてくれるようになった」
「あっ、そっか。久美子先生は保健室の先生だったし」
「最近はね、産婆としても呼ばれるの。旅籠の仕事より忙しかったりして」と久美子。
「じゃあ、みんながバラバラの時期にタイムスリップしてきたってこと? どうしてだろう」
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