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「理由はわからない。俺と裕子さんは一緒だった。けど、その歳月には特別な意味があると思うんだ。俺たちがタイムスリップしたそのわずかな時間の中、不思議な夢っていうか光景を見てた」
「光景?」
どういうことだろう。そう呟いて雪江は朝倉に視線を移す。
「うん、俺も同じだ。まるでドラマの総集編みたいに誰かの一生をみた。ある武家の長男として育ち、武芸で身を立てて死んでいくまでを走馬灯のように見た」と朝倉。
「私はどこかの武家の娘として生まれ、まだ十代の頃、嫁入りしたの。娘が産まれて、その娘のことをずっと心配しながら死んでいった」と杉田がしんみりとしていう。
「俺も先生と同じで武家の長男だったらしい。藩主の子供と一緒に勉強したり剣を習ったりして、ある日、いきなり斬られて何も見えなくなった。たぶん、死んだんだろうな」
そんなふうに徳田がいう。
「私もそう。けどその姿は男だったの。おそらく厚司くんが見た人と一緒に斬られて死んでいった」
四人がそれぞれ誰かの人生のイメージを見てタイムスリップしてきたという。雪江はと聞かれて首を振った。雪江は何も見ていない。いきなりズンって地面に落ちたのだ。
「でもそれって不思議だね。まるで生まれ変わる前の人のことを見てきたようなそんな感じに聞こえる」
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