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「そう、だから、雪江も何か見ているかもって期待していたんだ。雪江のビジョンを足して考えたら俺たちが江戸時代へきたその意味がわかるかもしれないって」
「ごめんなさい。私、何も見ていないの」
申し訳なく頭を下げる。
「いや、それはそれで新しい発見だと思う。そして神宮字だけこの関田屋に頼るようにして江戸に現れなかったってこともな。どんな状態だったんだ? タイムスリップしてどこに現れたんだ」
「えっと、夜で林っていうのかな、木がいっぱいあったところ」
あの当時を思い浮かべた。気づいたら暗いそんなところに立っていたのだ。
「わかりません。けど、スマホの明かりをつけたら目の前に侍が立ってて驚いちゃった。緊急アプリをつけたら逃げてったけど」
朝倉たちがその不可解さに眉間に皺を寄せながらお互いを見合っている。
「他には誰かいなかったのか。そこからどうやって雪江は町に住むことができたんだ」と朝倉が問う。
「えっと、龍之介さんっていう侍の目の前に落ちたらしいの。それで行くところがないって言ったら、その人が住んでいる長屋に連れて行ってくれたんだけど」
改めて考えるといくら悪意のなさそうな人だったにせよ、知らない人の家について行ったなんて無謀だったと思えた。
「龍之介さんって? 」
「そう、身分の高い侍なんだって。何か事情がありそうなんだけど、とりあえず、家臣の小次郎さんと三人で暮らしているの。その向かいにお絹ちゃんって子がいてその人にも色々教えてもらって」
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