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「神宮字がその人のためにタイムスリップしたとしたら、何か深い関わりがあると思うんだ。関係ないなら他のみんなと同じように俺を頼ってくるはずだ」
そう言われると確かにと思える。雪江と龍之介、どういう関わりがあるのか。
「じゃあ、私、あの長屋へ帰らないといけないってことなんだね」
「うん、その方がいいと思う」
「龍之介さんは身分が高い人らしいの。そのうちに元の家へ帰るだろうってお絹が言ってた」
「じゃあ、その龍之介さんが元の家へ帰ってしまったら、それまでの縁だったということでここへくればいい。仕事はあるからな。通ってこい」
その日はそれで話が終わった。徳田が雪江の長屋へ送ってくれる。もう人通りは少なかった。長屋はもう子供は寝ている時分だ。
「伊藤さんのところに妙な姉さんが来たって末吉に聞いていたんだ。それがすぐに雪江だって結び付かなかった」
「私、もう三回くらいあの旅籠の前まで送ってたんだよ。すぐ目の前にいたなんて思っても見なかった」
「俺たちがそうだったように、絶対に雪江も先生の店の前に現れると思ってたからな。それに末吉のやつ、雪江のことを赤髪の女神だって言い張っててさ。だから全然別人だと思ってたし」
徳田はその時のことを思い出したように笑う。
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