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早紀子は泣いているだろうか。喜んでいるだろうか。間挟みになってないだろうか。あの子は繊細な子だから。心配だ。
昔のことを思い出す。
何もないところで転んだり、進んで迷子の道案内したり、募金に貯めたお小遣いの全財産入れてみたり……そんなところが大好きだったし、今も大好きなのに。
だけど教室へ行ってみたものは。
『!』
「早紀子ちゃーん。あんなやつ死んでよかったんだよ。泣かないで」
「武田さん? だっけ」
早紀子の目の下は赤い。ああ。私のために泣いてくれたのかな。正直嬉しい。そう思う自分も嫌だけれど……。
「一緒に遊びに行こうー。一度きりの青春。一度きりの高校一年生だよー!」
「……でも」
「暗い顔しないで。死んだ人はどうせ戻らないし、生きてる人と仲良くするべきだよ。結局は」
「結局は?」
「なんでもないよ!」
武田さんとその取り巻きが、そこにいた。ああ。なんてクズなんだ。こいつら。
彼女らの派手な髪の毛に安っぽく濃すぎる香水は、きっと今もバッチリなん
だろうか。死んだら匂いはわからないから。
メイクは今日も崩れ気味で派手だけれど……バカみたい。似合うメイクをすればいいのに。やりすぎて下品。
早紀子は黒髪にほぼすっぴんに淡いピンクのリップのみだから、いかにも怖い子に囲まれる大人しい子って感じ。
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