ずっと言えなかったこと

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 早紀子は雪代を見て目を丸くしていた。  そして首を横に振り立ち上がった。 「悪い冗談はよして」 「早紀子さん」 「もう、頭がめちゃくちゃだよ」 『早紀子』  走り出す早紀子を私たちは追いかける。 「雪代、廊下を走るな」 「すみません! 急いでるんで!」 『ごめんなさい! 先生!』  私が謝っても意味ないけど。 「後で呼び出すぞ! 雪代!」  先生がそう叫んでも、気にしない雪代。  タンタンタンと階段をかけあがり、屋上に向かう様子の早紀子。  走る早紀子から涙の粒が飛んできた。  そのたびに思い出す。一緒に行った渋谷に原宿。地味な私たちがいていいのかなって笑い合ったね。一緒に勉強は定番だけど何度もやったね。つらかったね。難しかったね。だけれどやっぱりふたりいれば最強だったよね。  それなのに。 『早紀子ひとり残していってごめんね……』 「ミキ!?」  唐突に早紀子が振り返った。
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