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「あいつは残酷な女だ」
ドッカリと地べたに座り込んだ岳人が、苦虫を噛み潰したような表情で吐き捨てた。目つきの悪さが際立っている。
「簡単に騙されるお前もお前だよ」
横で涼しい顔をしている雅也は冷たく言う。
目線は手元の大きな本へと注がれたままだ。
「なに読んでんだよ?」
「深海建造物の詳細……ってところだよ」
「なんだよそれ。インテリめ。つーか、よく言うな雅也?お前だって萌香に骨抜きにされてたくせに。一時期しつこく言い寄ってたじゃねーか」
「しつこくない。ただ話してただけだ」
本から顔を上げると、雅也は面倒そうに岳人を見つめる。事実だったようで小さく舌打ちもした。
「穏やかじゃないね、2人ともなんか怖いよ?」
2人の対面で呑気に笑っている竜は先ほどからチビチビと旨そうに飲み物を口にしている。
「竜、お前まだ飲んでんのか?」
「限度ってものがあるぞ?まだ昼前なんだし、ほどほどにな」
「別に僕の勝手でしょ。水分補給はいつだって大事だよ」
言いながらも確かに過剰摂取かもなと思い当たった竜は、渋々とガラスの瓶を置いた。
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