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「ちょっと待て、今なんて?」
「ん?千歳様がお前の写真をご所望なんだよ。もう一枚撮らせろ」
何動揺してんだうさぎどん。もしかしておまえも千歳様のことが好きなのか?心底どーっっでもいいが。
「ちょ、ちょっと待て馬鹿わんこ!!今俺、すっげー頭とかボサボサで!!」
「いつもと変わらんだろ」
「だーかーらー、喋ってるところを撮るな!!相手はモデルなんだぞ!せめてキメ顔の俺を撮れよ!!」
「面倒くさい奴だな。じゃあさっさとキメ顔しろ、ほら」
俺なら間抜けな顔の理音も大好物だけどな。むしろキメ顔なんか雑誌で穴があくほど見てるから、気が抜けた顔を見る方が楽しい。俺を見て動揺してる顔とか、赤くなってる顔なんてもう……言葉にできないくらい可愛いんだ。
あああ、宇佐木なんかじゃなくて理音が撮りたい!! 早く昼休みにならないか!
「おい、俺さっきからキメ顔してんだけど」
「え、ああ。気付かなかった」
「コラぁ!!人がせっかく……!!」
パシャッ
「てめぇぇぇぇ!!!!」
ああもう宇佐木うざい。うるさい。千歳様に頼まれなけりゃ(交換条件付き)誰がお前なんか撮るか。とりあえず、今しがた撮った写メを全部ラインに添付して送った。
千歳:サンキュー!!葵にめっちゃ可愛いって伝えて。
俺:(すっごい嫌そうな顔のスタンプ)
千歳:頼むって!俺も今度仕事中RIONにお前のこと褒めちぎってやるからさ!
俺:任せろ、お安い御用だ。
なんか、千歳にうまくのせられてる気がしないでもないが、まぁいいか。
「おい馬鹿わんこ、今の写真まさか全部シンジに送ってねーだろうな……」
「全部送ったが?」
「おいっ!!ふざけんな、とりあえず一応本人に確認するもんだろうが!!」
「しただろう、撮っていいかって」
「いや、撮ったやつを見せろよ!!」
「ほら」
とりあえず、千歳とのライン画面を見せた。これで一応本人に『可愛い』って伝えたことになるだろ。(代理と言えど、理音以外の男を可愛いと言いたくない)
俺のスマホ画面をマジマジと見つめた宇佐木はみるみる真っ赤になっていく。
あれ?本当に結構マジなのか?
「勘弁してくれよ、もう……」
しゅううう、と湯気でも出しそうな顔でゴンっと机に突っ伏す宇佐木。こいつがこんなに動揺してるの、初めて見たな。
「……お前らも付き合ってるんなら、そんなに恥ずかしがらなくてもいいだろう」
「はぁ!?誰が付き合ってるって言ったよ!?」
「理音が、昨日千歳様本人から聞いたって言ってきたぞ」
あれ、違うのか?でも、理音が勘違いなんてするわけないしな……。
「違ーう!!そりゃちょっと声かけられてはいるけど……エッチもしちゃったけど……あの千歳シンジが俺みたいな一般人に本気になるわけないだろ」
はあ? 一般人??
「そんなことを言ったら、理音と付き合ってる俺はどうなるんだ」
「お前らは幼馴染だろうが!モデルのRIONと付き合ってるわけじゃねーだろお前は!」
それはそうだ。モデルのRIONはあくまでモデル。理音とは全然違う。でも、モデルのRIONだって俺の可愛い理音に違いない。全部ひっくるめて、俺は理音を愛している。
「俺にとって千歳シンジは超人気モデルだ。それ以外の顔なんて知らないし、知ろうとも思ってねーよ。もともとファンだったから、言いよられて嬉しいけど……でもきっと飽きたらすぐポイ捨てされるだろ」
今の宇佐木の言葉には、何故か俺がむっとした。
「……俺は、千歳様がそんな最低な男だとは思わないぞ」
「お前は理音くんをエサに懐いてるだけだろ。大体なんだよ千歳『様』って。お前の下心なんて丸わかりなんだよ、この馬鹿わんこ」
「………」
それを言われたらおしまいだ。でも俺には千歳が……いや、千歳様がそんないい加減な男には思えないんだがな。
まだ付き合いも短いし、俺が奴の何を知ってるんだって言われたらそれまでだが。大体、最初はライバルだった男だしな。
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