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やばい、ニヤニヤが止まらない。理音が可愛すぎるから、マジでやばい。
自分でネコって認めたぞ、理音!(ネコとかタチという言葉は宇佐木に教えてもらった)つまりは俺に抱かれる方なわけで……いや俺にって決まったわけじゃないけど。
「コラ昂平!さっきからニヤニヤしてねーで早くサーブ投げろっ!!」
ハッ
今は部活中だった。そんでもって部員同士でチームに分かれて練習試合中だった。相手チームの佐倉先輩からの怒号が飛び、俺は妄想の世界から帰ってきた。理音は同じチームだから、ニヤニヤしてる顔は見られずに済ん……いや、見られてた。
「犬塚先輩があんなゴキゲンな顔してるの、初めて見ました俺」
「きめぇ……」
うわ、すげぇドン引きしてる。でも引いた顔も理音は可愛い。
「……いきます」
いつもの仏頂面に戻し、息を吐いて、興奮をそのままボールに乗せてジャンプサーブをかました。ボールは物凄い轟音を立てながら相手のコートへと突き刺さってバウンドした。ふう……。
「アウトだよ馬鹿!何満足した顔してんだ!」
「あれ?」
「お前、これが試合だったらぶっ殺すぞ!」
いけないいけない、興奮して力が入りすぎてたみたいだ。佐倉先輩は普段はチャラいけど、試合中は練習でもガチで厳しくて恐い。さすがチームの要、正セッターだな。それでも最終的には俺と理音のいる方のチームが勝った。
「犬塚、ナイスファイト。でも試合ではポカすんなよ」
「うっす」
そう言ってくれたのは尊敬する矢野キャプテン。男子バレー部では理音の次に人気がある。でも理音は補欠だから、バレー部員としてじゃなくてモデルとしての人気だ。つまりバレー部員の中では矢野先輩が実質一番人気ってことだな。
補欠であることを理音は仕事もしてるから仕方ないって言ってるけど、ホントはレギュラーになりたいんじゃないかって俺はひそかに思ってる。じゃないと朝練だって毎日来たりしないよな。トレーニングだって本人は言うけど……。
「昂平、サーブ練習付き合って」
「おう」
理音は自分はバレーがへたくそだって言うけど、決してヘタなわけじゃない。でもバレーは怪我もするスポーツだから、あんまり無理はしてほしくないと思ってる。ましてやモデルだし、ブロックするときに顔面にボール受けたらどうするんだ。
理音は仕事も真面目にこなしてるから、ホントに誰かが見ててやらないとこの間みたいに身体を壊す。誰かって、その役は他の誰にも譲る気はないけど。
「行くぞー」
バシッ
「……………」
理音はヘタじゃない。ヘタじゃないんだけど……。
「敵の真正面に行きすぎなんだ、お前のサーブは」
「線ギリギリに打ったつもりなんだけど!?」
「どこがだ」
コートの隅にて――。
「佐倉先輩、犬塚先輩と猫田先輩の姿はもはやカップルがイチャついてるようにしか見えないんですけど、俺の目がおかしいんでしょうか?」
「安心しろ進藤、俺もだ」
「さっき犬塚先輩がゴキゲンだったのって、やっぱり猫田先輩が関係あるんですかね」
「それ以外にねぇだろ」
「なにがあったんでしょう?」
「さあ。チューでもされたんじゃね?」
「わああ!大人の世界~!」
コートの隅っこでそんな話をしている佐倉先輩と進藤。聞こえてないフリしてるけど、俺には思いっきり聞こえてるからな。それに残念ながらチューではなくて間接チューだ。おかずの食べさせあいっこをする時、俺はいつもさりげなく理音の箸を舐めている。
……変態と罵るなら罵ればいい。俺は傷つかない。なぜなら変態だからだ。開き直った人間は何よりも強い。でも間接キスより、食べさせる時にチラチラと見える理音の赤い舌の方が興奮するんだけどな。
いけない、これ以上思い出すと勃起するからやめておこう。部活中くらい自重しろ、俺。
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