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 部活が終わって、久しぶりに理音と帰る。外はもう日が暮れ始めていた。ぼーっとしていると、理音が俺に話しかけてきた。 「あのさー昂平、帰りお前んち寄っていい?」 「え?」 「明日までに英語の課題しなきゃいけなくて。お前、教えろよっ」 その上目遣いは無意識なんだろうか。可愛すぎるだろ!!俺を殺す気なのか、理音は。俺が死んだら大泣きするくせに死んでほしいのか。 「どうせ授業中ぼーっとしてたんだろ。せっかく俺の辞書貸してやったのに」 「う、うるせーよっ、それとこれとは関係ないだろ!」 「……どうせならシャワー浴びて、晩飯も食ってから来い。時間がかかるだろうからな」 「わかった!じゃ、またあとでな」 「おう」  俺の家の前で、ひらひらと手を振って理音と別れた。ったく、理音は変わらないな。可愛いとことか、可愛いとことか、あと可愛いとこ。見かけは綺麗になったけど、中身の話だ。理音は見た目も中身も可愛い。  今夜母さんは夜勤だから明日の午前中まで帰ってこない。でも、泊っていけとはさすがに言えなかった。 『お前、欲求不満オーラっつーか、性欲ダダ漏れだぞ』 一晩一緒に過ごして、理音を襲わない自信がないから。 「来てやったぜ!」 「おう。……ん?何だその荷物」  理音は部屋着を着ていて、なぜか大荷物を持っていた。学校のカバンと、紙袋二つ。 「制服とカバン。どーせお前ウチに起こしにくるから、一緒に起きて朝練行こうと思って。それと、こっちはかーちゃんが夜食にしろっておやつ渡された」 「それはどうもご丁寧に」 俺はおやつの入った紙袋を受け取った。え、つーか……泊るって言ったか?今。 「つってもただのスナック菓子だからな。俺は体重制限もあるから食べられねぇし、花音はガキのくせにダイエットするっつって食べねぇからウチじゃおやつが減らねぇんだよ。かーちゃんが食いたくて買ってくんだけど、自分だけ太るのは嫌だーつって結局食べねぇし。だからお前が食ってくれよ」 「ふうん、そういうことならいつでも処理係するぞ」 冷静に平静に振る舞ったが、俺の脳はプチパニックを起こしていた。 「――いや、だからそーじゃないって」 「なんで!?」 「何でってなんででもだよ。そういう法則なんだよ」 「マジで英語意味わかんねぇぇ!」 「英語とかほぼ暗記だろうが」  部活が終わったのが18時で、理音が家に帰ったのが18時半。理音がうちにきたのが19時半。そして現在、なんだかんだと英語の課題に追われて22時半。時間がかかるとは思っていたけど、かかりすぎだろ。  期待していたようなラブラブな空気はない。ま、恋人でもないからラブラブもクソもないんだけど、ちょっとくらい妄想してしまっても罰は当たらないだろう。 「はあ、終わった……」 「つーかお前に教えるのがしんどい。よくうちの高校受かったよな……」 暴言だ。当時は嬉しかったんだけど、敢えての暴言だ。 「あのときの俺は神が降臨してたんだよ」 「また呼び出せ、その神を」 「そんなしょっちゅう呼び出せるか!」  理音は俺のベッドへとダイブして、うーんと伸びをした。好きなヤツが自分のベッドでくつろいでいる!!この光景、軽く勃起する。 「つーか理音、今夜はどこで寝るつもりなんだ?布団はこれしかないぞ」 「え?お前のベッドでかいし、ここで寝るつもりだけど?」 「……は?」 コイツは、ホントに俺を殺しに来たんじゃないだろうな。 「ダメか?」 「ダメってか……え、ちょっと待て」 「男同士なんだから別にいいじゃねーか、男女の幼馴染だったらさすがにヤバいってことくらい俺でも分かるし!」 いやいやいや。そんなの関係ないから。男だとか女だとか。お前は理音だろうが。俺はお前が好きなんだぞ? あーでも、なんか変なことしようもんなら一瞬でこの信頼も崩れてしまうのか。こういうのってなんて言うんだっけな。あれだ……生殺し。 「あ、俺昂平にモデル仲間教えてやろうと思って雑誌持ってきたんだ、俺のカバン取って!お前もこっちに来いよ」 「………」  ついに無言になった。だって俺のベッドに理音が居て、その理音が俺をベッドに誘ってる……ああああもう、とにかく落ち着け俺っっ!!!
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