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番外編② 宇佐木君と千歳君 1
「RION!俺、葵と付き合うことになったから」
「……は?」
「付き合うっていうか、付き合う前提のトモダチになったから!まぁ同じことだよな」
「ちょ、ちょっと待って千歳くん、何のこと?」
「何って、俺こないだRIONに葵の連絡先聞いたでしょ」
「葵って……宇佐木ぃ!?」
それは、まさに寝耳に水だった。今日は千歳くんと一緒の撮影で、仕事が一段落したから控室で一緒に着替えていた。そしたら急にそんなことを言われたのだ
まず俺は、千歳くんのいう「あおい」っていうのが誰のことか分からなかったんだけど……。だって多いだろ最近「あおい」って名前の子。男でも女でも。
宇佐木のことはずっと宇佐木って呼んでたし、一番仲のイイ昂平でさえ『うさぎどん』なんてふざけたあだ名で呼ぶから、宇佐木の名前が葵っていうのを忘れていた。
でも、俺が千歳くんに連絡先を教えた人間はただ一人だったから。
「い、いつからっ!?」
「んーと、二週間前くらい」
「めちゃ最近だね!?つーか俺が宇佐木の連絡先教えたのと同じくらい!?」
「うん。次の日会った」
「次の日!?」
「その日にセックスした」
「セッ……ええええ!!?」
なんてこった!俺と昂平なんてお互い好き同士だったのに、身体を重ねるまでに一体何年かかったことか。それをい……い……いちにちっ!?
えーうそーっ今ドキの高校生ってそーなのぉー!?(混乱のあまりJK化する理音)
俺だって今ドキの高校生のはずなんだけどまさかそんな、……ん?
「ちょっと待ったぁ!宇佐木は小野先生が好きだったはず……」
毎日毎日健気に保健室に通っていたのを俺は知ってるぞ!!
「あーその先生にはね、けっこー前に振られたらしいよ?」
「え……」
あっさりと返された。
そういえば……
”もう来んなって言われたから”
”なんで?”
”なんでだろうねぇ”
あのときには、もう?
そっかぁ……。
「そんでさぁRION、葵のことで相談に乗ってほしいことがあるんだけど、いいかな?」
「相談!?千歳くんが俺に?」
もう既に身体の関係まであるというのに、今更俺に何の相談があるというのだろうか、このスーパーイケメン様は。
*
「それでなー昂平、……聞いてるか?」
「聞いてるぞ」
俺は仕事終わりに昂平に家に寄って、さっき千歳くんから聞いた衝撃の事実を伝えた。けど昂平は至極あっさりとした反応で……正直、つまんねぇ。
なんで!?俺はすっげーびっくりしたのに。ていうか勉強しながら俺の話をテキトーに聞いてんじゃねーよっ!
俺は腰を降ろしていた昂平のベッドから立ち上がると、机に向かって数学の課題をやっている昂平の背中にピトッとくっついて抱きしめた。昂平の身体が少しピクッと反応したことに少し気分を良くする。
「……もしかしておまえ、知ってた?」
「付き合ってるとは知らなかったが、千歳からしょっちゅう宇佐木についての質問メールが来ていたから、気があるのはなんとなく気付いてた」
「なーんだ。俺にも教えてくれりゃよかったのに」
「いや……別に言うほどのコトじゃないだろ」
まあな。でも俺だって千歳くんとも宇佐木ともトモダチなのに!確かに昂平の方が宇佐木と同じクラスで仲良しだから、昂平に聞くのは当然かもしれないけど……。
「……千歳がお前にメールしなかったのは、俺に遠慮してのことだと思うが?」
「え?」
グイッ
「んっ」
昂平が振り向いて、目を閉じる暇もないほど素早く唇にキスされた。不意打ちすぎて、俺は思わず赤面してしまう。
「……俺とだったら、どうなる心配もないからな」
「そんなの、俺だって一緒じゃんっ……」
「違う。千歳は理音のことが好きだったから。例え他のヤツの相談だって俺は嫌だ」
そう言って、昂平はもう一度俺にキスをした。そして軽々と俺をお姫様抱っこすると、そのままベッドへ二人でダイブした。
「ン……今日、千恵さんは?」
「夜勤だから帰ってこない。……だから、俺のところに来たんだろ?」
「明日も朝練あるぞ」
「頑張って早起きしような」
「ちょ……こうへっ……ンン……ッ」
別に期待してたわけじゃないけど、してなかったわけでもない。だから昂平の手が俺の服の中に入ってきても、俺はそれを咎めることはしなかった。
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