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昼休み、俺はいつものように弁当を持って昂平のクラスへ向かう。最初は俺のクラスでばかり食べていたけど、今は宇佐木と三人で食べているから昂平のクラスで食べることが多くなった。
昂平、俺が昨日千歳くんから頼まれたこと、ちゃんと宇佐木に確認したかな……?
「理音!」
「よ。メシくおーぜ」
俺が教室に入ると、すぐに昂平が見つけて名前を呼んでくれた。ずっとドアの方を見つめていたに違いない。
朝も……つーか昨日の夜からずっと一緒なのに、全然飽きないよな。まあそれこそ、ガキの頃から飽きることなく一緒に過ごしてるわけだけどさ。
「昂平、宇佐木にあのこと言ってくれた?」
宇佐木の隣の椅子を借りて、宇佐木と昂平と三人で向き合って座る。(昂平と宇佐木は前後の席なのでそのままだ)
「あのことって?……あ、忘れてた」
「お前同じクラスなんだから忘れるなよ」
「なになに、なんのハナシ?」
宇佐木は惣菜パンにかぶりつきながら、興味津津で聞いてきた。
「今週の土曜にね、千歳くんが4人で遊ぼうって」
「え?」
「ていうか俺と千歳くん、こないだ仕事で出版社の人に遊園地のチケットをそれぞれ二枚ずつ貰ったんだよ。で、どーせなら4人で行こうってなってさ……あ、宇佐木は絶叫マシーンとかダメな人?」
「いや、別に平気だけど……」
「じゃ、行こうぜ」
「……分かった。てか、いいの?理音くんはわんこと二人でデートしたかったんじゃ」
その問いには、何故か俺じゃなくて昂平が答えた。「そりゃそうだけど、千歳様の誘いは断れないだろ」
「………」
うーん、自然に誘えたかな?どっちにしろ昂平が誘うと不自然になっちゃいそうだから、やっぱり俺が誘って正解だったかも。
最初は昂平も4人で遊ぶのを嫌がっていたけど、千歳くんから別に貰った映画のチケットで手を打ってた。まったく現金な奴。
実は、千歳くんからの相談というのが、こういう話だったんだ。
昨日の仕事終わり、俺は控室で千歳くんに相談された。
『俺さ、もっと葵とラブラブになりたいんだよな』
『へ?』
『身体から取り入ったから当たり前だけど、俺、葵に全っ然本気だって思われてないんだよ。セフレと思い込んでるっつーかさ……俺、めっちゃマジなのに』
『まあ、宇佐木は一筋縄じゃいかないところがあるね。昂平と違って』
『そーなんだよ。昂平みたいに単純だったら簡単だったんだけどなー』
『……』
幼馴染兼恋人が馬鹿にされてるけど、俺もそう思ってるから何も言い返せない。昂平お前、ちょっと千歳くんのこと崇拝しすぎじゃね?(自分がエサだと気付いてない理音)
『大体なんで身体から入ったの?千歳くんならそんなことしなくてもイケるでしょ』
『他の子が相手ならもちろんそんなことはしないけど……、葵が俺の好みすぎて我慢できなかったんだよ。それに失恋したてだって言うし、すっごい優しくエッチしたらコロッと俺のことを好きになってくれるもんだと思ってたんだよね……』
『それはやっちゃったねぇ……』
もしかしたら宇佐木は、既に振られてはいるけどまだ小野先生と千歳くんの間で揺れてるのかな。
そりゃそうだよな、あんなに小野先生のことを好きそうだったのに……。
でも、だからこそあっさりと小野先生のことを諦めたことはちょっと不自然だと思っていた。そんなにひどい振られ方をしたんだろうか?
宇佐木は秘密主義っぽいところがあるから、そういうことは俺にも昂平にも教えてくれない。ダチなんだから、もっと色々話してくれてもいいのに。
俺と昂平は宇佐木にすっごく世話になったのに──俺達はまだ、宇佐木に何も返せていない。(昂平に至っては返す気すらなさそうだけど)
『それでさ、俺達こないだA出版から遊園地のチケットもらったじゃん?あれ、もう昂平と行った?』
『いや、まだ誘ってもいないけど』
『ヨシッ!……じゃあさー、俺と葵とRIONと昂平の四人で行かない?』
『え?』
『こう、RION達二人がすっげーラブラブなところを見てさ、葵も自然に俺とそうなってくんないかなって……ちょっと簡単すぎるかな?』
『うーん……なんとも言えない……』
それこそ宇佐木はそんなに単純じゃないだろう。俺たちが外でラブラブするのも色々と危険だし……そりゃーしたいけど。
『まーそれでも、俺と二人だったら来てくれないかもしれないんだよね、昼間だし。夕方以降じゃないと会ってくれないんだ、葵』
『え……なんで?』
宇佐木、部活とか何もやってないのに。
『わかんない。昼間に俺と歩いてるとこ、見られたくないんじゃねーかな……。噂になって俺に迷惑かけたくないとか、そういうどうでもいいこと心配してそう』
『………』
『健気って言えば健気なんだけどさ。俺は別に噂になっても構わないんだけどなぁ。俺の気持ちが真剣だって理解してもらいたいし。……なぁRION、協力してくれない?』
千歳くんのこんな真剣な顔、初めて見た。何かに悩んでる顔も……。
千歳くんは俺と年も一つしか違わない同期だけど、すごく兄貴って感じで何かあったらいつも俺を陰で助けてくれた。優しいしカッコイイし、本当に頼りになる人なんだ。
俺が今まで順調にモデル活動を続けてこれたのも、半分以上は千歳くんのおかげ。
そんな兄貴分の千歳くんの真剣な頼みごとを、俺が引き受けないわけにはいかない!
『……わかった。任せて!』
それに、宇佐木もトモダチだし!
小野先生に振られて今は辛いだろうけど、千歳くんと付き合ってちょっとでも元気になったらいいなぁって。事はそんな単純じゃないんだろうけど……。
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