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 そして、土曜日がやってきた。今日は部活も休みだし、超久しぶりの遊園地をめいっぱい楽しもう! 一番の目的は宇佐木をその気にさせること、だけど。  まぁ俺は勝手に昂平とイチャついてればいいんだし、周りにバレないように地味めな格好で行こう。  ピンポーン 「おにーちゃーん!コーヘイくんが来たよー!」 「おう、上がってもらってー」  俺はまだ準備が万端じゃないんだ!髪型はどうしようかなー。階段を上る音がして、しばらくすると昂平が顔を出した。 「おはよ、早いな昂平!」  今は9時半で、千歳くん達との待ち合わせは11時半だ。現地集合だけど。 「……」 「昂平?」  俺を見るなり、口をぽかんと開けて無言になる昂平。え、何何。俺、そんなにおかしな格好してるか?  ちょっと衿ぐりの開いた白いカットソーに綺麗なブルーのロングカーディガン。ボトムは細身の黒パンツ。普通の格好だよな。むしろ地味めな。あと首に革製のチョーカーを巻いて完成! 「理音……なんでそんなに可愛いんだお前はー!」 「え?」 「ああーっやっぱりダブルデートとか了承するんじゃなかった!!大体ダブルデートって何なんだ!!お互いラブラブなんだから別々でいいだろうが!!」  ちょっ、何で人の部屋で頭抱えて絶叫してんだこいつ!?カノンが「えぇっ!?」て顔で覗いてるからー!! とりあえず俺は昂平の頭を一発殴って落ち着かせた。カノンには「あっちに行ってなさい」と言い聞かせて。 「おまえなぁ、俺たちは今日は千歳くんに協力するために行くんだから。目的は千歳くんと宇佐木をラブラブにさせることなんだよ、俺達がラブラブするんじゃねーの!……まあ……宇佐木に見せつけるためにラブラブしなきゃいけない、んだけど」  俺は姿見の前に立ち、チョーカーとピアスを着けてコーデを完成させた。うん、これでグラサンでもすればバレないだろ。胸元に掛けておこう。沢山歩くだろうから、靴はスニーカー一択だな。 「けっこう面倒くさいんだな千歳。うさぎどんとラブラブになりたいならそのキラキラしたお顔をめいっぱい活用すればいいだろうが!神レベルのイケメンの癖に何をウダウダ悩んでるんだ、意味が分からん」 「だからそれが通用しなかったんだろ、宇佐木には」 「目が悪すぎるだろ、うさぎどん!」 「いや、そういう問題じゃねーから」  そりゃ、俺だって昂平と二人でデートしたかったけどさ。でも今回ばかりはお世話になってる千歳くんに恩返しできる機会だし……。  昂平は巻き込んで悪いなって思うけど、自分の方が宇佐木とは仲良いくせに失恋した友人を慰めてやろうとか思わないのか。  まあ、宇佐木にとっては余計なお世話かもしれないけど……。 「ていうか理音、少し薄着じゃないか?何かもう一枚羽織った方がいいぞ」 「えー、せっかくのロングカーデなのにどうすんだよ。ストールでも巻くのかぁ?せっかくチョーカー着けたのに」 「ちょっと胸元見えすぎだろ!可愛すぎるし目の毒だから隠せ!」 「どうもありがとう……」  褒められたので素直に礼を言った。しかし相変わらず過保護だな、昂平。 でもいうことは聞かなかった。オシャレは我慢だからな。あと俺暑がりだし。    ちなみに昂平はデニムに青と黒のツートーンのウインドブレーカーを着ている。昔一緒に買い物に行った時、俺が選んでやったやつだ。 昂平には明るい青が似合う。別に相談してないのに二人とも青コーデで嬉しいような……恥ずかしいような。 それにしても昂平、コーデは大味だけど背が高いからどんな服でも大体何でも似合うんだよな……。 「どうした、理音」 「ううん、じゃ、行くか」  なんとなく悔しいから褒めてやんない。俺はモデルだからかっこいいのは当たり前として、昂平は素人だから褒めたら俺がすげー昂平にゾッコンみたいな感じするし……!   ──まあ、ゾッコンなんだけど。  階段を降りると、カノンが寄ってきた。 「お兄ちゃんたちもう行くの?」 「あぁ。遊園地なのに連れてってやれなくてゴメンな」 「カノン、ダブルデートの邪魔するほど野暮じゃないよ!……それにしてもお兄ちゃん、なんだか女の子みたい。コーヘイくんのカノジョに見えるよ」 「ば、馬鹿なこと言うなって」  それを狙ってます、すいません。だって外でラブラブする予定だから、せめてもの抵抗っていうか、見られても見苦しくないようにだな……。 「ダブルデートの人達も男の人なの?」  カノンのその問いに、昂平が答えた。 「そうだぞ、カノン。ていうかうさぎどんと千歳シンジだ、どっちも知ってるだろ」 「ええっ!ウサギさんって千歳シンジと付き合ってたの!?うそーすごい!!でも試合のときはお互い知らない人みたいだったよ?」 「まぁ高校生は色々あるんだよ……そろそろ行くぞ、昂平」  兄とその周辺の恋愛事情をあまり妹に知られたくないっ! ていうか恋愛は同性同士がするもんだって勘違いしたらどうするんだよ!! あ、でも彼氏を家に連れてこられるより、彼女を連れて来た方がダメージは少ないかも……うん……。  俺がそんなことを思っていると、昂平がカノンに言っていた。 「じゃあカノン、土産買ってきてやるよ」 「うーん。それよりコーヘイ君、お兄ちゃんとお揃いの物でも買ったら?」 「おっ、いいなそれ」  いいな、じゃねぇ!!それとカノン、お前はいつからそんなアドバイスがさらっとできるようになったんだよ!! 「早く行くぞ昂平!行ってきますっ!!」 「行ってらっしゃーい♪」  昂平の腕を無理矢理引っ張り、俺たちは出掛けた。
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