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今度は手術室、と書かれたドアの中に入った。なんでこんなル―トがあるんだよ!!
「ひぃっ!?」
ここ、床一面血だらけじゃねーか……!!こわいこわいこわいグロいグロいグロい!!
「た す け て ……」
「ギャアアアアアアアア!!!」
いきなり簡易ベッドに寝ていた人形……と思っていたオバケ役が起き上がったので、俺は死ぬほどビビって今までで一番最大の悲鳴をあげた。
「たすけてェ……わたし、藪医者に手術……失敗されたのよぉ……」
「そそそれは大変ごッごしゅーしょーさまですぅ!!ごめんなさい!!!」
「ハハッ、何普通に慰めてんの?しかも葵は悪くないしね」
なぐさめてねェェェ!!!謝ったのはついだつい!!!オバケはそれ以上は近づいてこないけど、お腹から内臓が出てる!!ごっそり出てる!!もうそれ手術失敗ってレベルじゃないだろ、立派な殺人だろぉぉ!?!?
俺は泣きながら急いで手術室の中を走り抜けた。もう一生離さないってレベルで、シンジの腕に強く強くしがみつきながら。
どんなに後からからかわれようと、もう構うもんか!!
「はーっ、はーっ、まじ、こえぇ……!!」
てか、いつまで続くんだよこのホラ―ハウス!?長くない!?気合い入りすぎだろ!!
「なぁ葵、オバケが恐くなくなる方法教えてあげようか?」
「え!?」
いきなり爽やかな声で、そんなことを言われた。シンジはティッシュを出して、さっきから俺の涙や鼻水をまるで小さい子にするように拭ってくれている。そして特に逆らわない俺。
「そ、そんな方法があるのか……?」
「あるよ、とびっきりの方法が。夜一人でも恐くないよ」
ていうかリタイヤすればいいと思うんですが……!?でも今近くにリタイヤできるドアがない!ちくしょう!それと今夜は夜中に一人でトイレ行ける自信ないから、是非教えてもらわないと!!
「お、教えてください千歳様……!!」
あ、ワンコのが移った。
「ふふ、あのね……エッチなこと考えるといいんだよ!」
「はい?」
シンジはこの血まみれの場所にそぐわないキラキラした笑顔で、明るく言ってのけた。そして、何故かシンジの顔がゆっくりと近づいてきて……
「ンンッ!?」
ホラーハウスの廊下のど真ん中で、触れるだけの優しいキスをされた。
「な、な……」
こんな場所で何考えてんだよ!?と言いたかったのに、薄ぼんやりとしたライトに照らされたシンジの顔があまりにも綺麗だったから、俺は口をパクパクさせただけで何も言葉が出てこなかった。
また心臓がドキドキしてる……それがホラーハウスのせいなのか、シンジのせいなのか、俺にはもう分からない。
「エッチなこと考えてると、オバケは逃げちゃうんだってさ!」
「んっ……ふぅっ……」
もう一度、今度は深いキス。軽く抱きしめられて身体が硬直する。暗闇とはいえ、オバケ役とか監視カメラとかで誰かに見られてるかもしれないのに……いや、見られてる。きっと見られてる。
――唇を離されると、軽く息が上がってた。
「……俺がこんなに余裕なのは、今日ずっと葵とエッチしたいって思ってるからかなぁ」
「!」
「葵、好きだよ」
……俺、こういうの知ってる。吊り橋効果ってやつだ。恐い状況のドキドキを利用して、一緒にいる相手に好きだって勘違いさせるやつ。
今、俺がドキドキしているのは……
「葵も……俺のこと、好きになってよ」
「シンジ……」
「遊びじゃないよ、大切にするから……」
シンジの本心なんて分からない。もしかしたらこれが彼のいつもの常套手段なのかもしれない。気に入った相手を落とすための……。
だってこんな状況、落ちない方がおかしいだろ!けどわざわざこんなことしなくたってさ、
俺は、もう……
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