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「ねぇお願い!俺と契約して!君と俺が契約するには、人間側の「許可」がいるんだ。だから、ね?」
「許可なんて…するわけねぇだろ!俺は男だって言ってんじゃねぇか」
「それはそうなんだけど…」
「しつこい!」
諦めの悪い奴は大嫌いだ。これ以上付きまとわれるのは迷惑極まりないので一刻も早くこの場を去りたかったのだが……
「仕方ない…ちょっとこっち向いてくれる?」
「なんだよ、まだ何か……っ?!」
男と目を合わせた瞬間、その瞳が妖しく光った。すると突然体が熱くなり、力が抜けていく感覚に襲われる。なんだこれ…体が全然動かない…視界が…ぼやけ、る………
「こうやって君を操って強制的に許可させることもできるんだけど、俺はこういうやり方、好きじゃないんだ。だから…君の意思で俺を受け入れてほしい」
パチンと指を弾かれると、途端に体の自由が戻る。このままじゃまずい。直感でそう感じ取った俺は慌てて距離を取り、男を睨みつけた。
「…優しくされたら絆されるとでも思ってんの?……絶対しねぇから」
「……そっか」
そうつぶやく男の笑顔はひどく悲しげだったが、俺には関係ないことだ。だってもう会うこともないだろうし。やっと諦めてくれた…そう思って安堵の息を漏らすと再び目の前が暗闇に包まれ、景色が遠ざかるのをぼんやりと感じながら俺は意識を手放した。
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