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道場を再び、静寂が支配した。真栄田と対して蹲踞し、相手の呼吸に合わせて立つ。
恭子の方が身長は十センチ以上高い。まるで大人と子供だ。年齢は逆だが。
真栄田は自分から動かない。恭子のすり足に合わせて、体の向きを小さく変えるだけだ。
まずは力量を計ろう。
「やあああああっ!!!」
恭子が長身を生かして面の連打を繰り出し、真栄田が受ける。引き胴を一つ入れてから、再び面。
体を寄せると真栄田が竹刀を強く押し返し、つばぜり合いになる。
「君の剣は、小次郎というより武蔵だな」
真栄田が小声でごちる。体を離して三度目の面打ち、連続の胴。真栄田は恭子の執拗な攻撃を受けきってから、返し小手。恭子がわずかに手首の位置をスライドさせ、有効打を逃れる。
「ここまで四人。飛び込み胴。抜き胴。引き小手。払い胴……か」
念仏のように唱えた真栄田の足が一瞬、止まる。その隙、恭子が大きく竹刀を振り上げた刹那、真栄田が初めて攻勢に出た。足を踏み出し、小さな体を縮めて、ぐっと間合いを詰める。
「面っ」
「ど――――ッ」
ぱしぱしっと、二つの打撃音が続いた。「ああ」という失望の声が漏れる。面を打った恭子が先、真栄田の胴が後。上がりかけた白旗を、石川が制した。
「護佐丸君の面は打ち込みが不十分だ。続けろッ」
「助かった」という、安堵の息が道場を包む。
真栄田が微かに笑う。だが最初の人懐こさは微塵もない。
「面白い。君の剣道には面がない」
読まれていた。だから面を守らなかった。恭子の背を冷汗が滴り落ちる。
「長身からの上段も面の連打も、すべて捨て技だ。君の剣は正道に見えて奇道だ。攻撃と見せて隙を突く逆撃中心。防りの剣が君の型だ」
見抜かれている。恭子は精神を研ぎ澄まし、好敵の眼を見据えた。
真栄田が半歩、距離を詰める。長身の恭子が気圧され、一歩下がった。
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